「雨 北鎌倉」色とりどりの花で創り出す非現実的な美しい世界〈景色風〉−亀井紀彦氏のアトリエにて−

独自の視点で自然の美しさと儚さを表現

北鎌倉駅から徒歩約5分の場所にある「雨 北鎌倉」は、2020年7月に美術作家・花道家の亀井紀彦氏がオープンしたアトリエ＆ギャラリーです。学生時代に茶道や華道を学び、草月流師範を取得した亀井氏。華道や茶道、盆栽や箱庭にも通じる日本独自の美意識、小さな空間に壮大な世界を凝縮するという視点は、今も自身の作品のテーマとして存在し続けていると語ります。

そんな亀井氏の手がけるアートプロダクトブランド「雨 ame」は、生花、生花を加工したプリザーブドフラワー、布などで作られたアートフラワーを使用し、存在しない色鮮やかな風景を目の前に生み出すもの。“雨”という名前は「花や木など自然の美しさを目にした時のように、心がしっとりと潤うような感覚をもたらす作品を」という亀井氏の想いから名付けられました。

手のひらにおさまる〈景色風〉

本体験で制作するのは、桜島で採取した浮き石にプリザーブドフラワーやドライフラワーを挿した、色鮮やかな〈景色風〉。「存在しない景色を手のひらに」というコンセプトのもとで制作するアートオブジェです。本体験では、亀井氏が作品として制作する〈景色風〉よりひとまわり小ぶりなサイズの浮き石を使い、自由に景色を作ります。

作成後には、作品中の景色にそよぐやわらかな風をイメージした4種類のアロマオイルからお好きな香りを1種類選びます。柚子やヒノキ、シソなど、日本の天然香料を使用して作られたアロマオイルは、調香師「sōhon」の津田啓一郎氏のブレンドによるもの。〈景色風〉の浮き石部分に一滴たらすと香りの風を感じられ、現実と非現実の境界線が混ざり合う不思議な感覚を味わうことができます。

どのような物事から着想を得て、作品にどのような想いを込めているのか。実際の作業に入る前に、亀井氏から作品の解説を聞くことができるのも魅力。プリザーブドフラワーの扱い方や、作品に使用しているアートフラワーの素材についても知ることができ、体験前に知識が深まります。

色鮮やかな花材と個性ある浮き石

〈景色風〉は、ピンセットやハサミを使用して制作します。テーブルにずらりと並んだ色とりどりのプリザーブドフラワーやドライフラワーは、見ているだけで気持ちが華やぎます。

好みの花材をいくつか小皿に取り分けたら、浮き石の内部をくり抜いてオアシス（スポンジ）を埋め込んだ土台を選びます。浮き石はひとつひとつ形や色が異なります。使用したい花材から相性の良さそうなものをイメージして選んだり、〈景色風〉を飾りたい場所に合うような風合いのものを選んだりと、思い思いにお選びください。

存在しない風景を作るひそやかな愉しみ

花材と浮き石を選んだら、亀井氏のアドバイスのもと花を挿していきます。基本的な挿し方やコツなどを丁寧に教えてもらえるので、細かい作業が苦手な方も安心して楽しむことができます。

花材を選び、一輪ずつ挿していく。黒を基調とした落ち着いた空間で行うその作業は、まるで瞑想のよう。日常の慌ただしさを忘れて非日常の世界にじっくりと向き合うことで、心が静かになっていくのを感じられる特別なひとときです。

制作中に時々目を細めてみたり、メガネを外してみたり、あえて視界をぼかして作品を見ることで、グラデーションが自然であるかに気づくことができます。色の境界線をはっきりとさせず、なだらかに美しいグラデーションを作っていくのも〈景色風〉作りの楽しみのひとつ。一度挿した花は別の花材と挿し替えられるので、完成までじっくりとご自身だけの景色と向き合うことができます。

お茶と鎌倉銘菓を味わいながらゆったりとした時間を

〈景色風〉の制作の合間もしくは体験後には、季節のお茶と鎌倉銘菓をご用意しています。ご自身の作品を眺めながらお茶とお菓子をいただく、豊かさに満ちたひとときを心ゆくまでご堪能ください。

鮮やかな花材は、経年によって退色していくものだそう。「色が薄くなっていく過程も、本物の自然を愛でるように楽しんでほしい」と亀井氏。現実の世界で季節の移ろいを感じるように、手のひらの中の世界にも自然の儚さや無常を感じられるのも〈景色風〉の楽しみ方のひとつです。

アロマオイルは、「色風 color wind」「淡風 pale wind」「翠風 green wind」「懐風 nostalgic wind」の4種類（Otonami限定ハーフサイズ / 5ml）。香りを嗅ぎ比べてご自身の景色にぴったりの香りを選び、お持ち帰りいただけます。香りとともに眺める〈景色風〉は、存在しない風景であるはずなのに、その調和のとれた色彩はいつか見たことのある風景のようにも感じます。

どこか懐かしさを感じる美しい景色へ想いをはせ、それを手のひらや部屋の一角で大切に愛でる、ひそやかな喜びを日常に取り入れてみませんか。