東京・世田谷「アトリエシムラ」桜を織る全3回コース −世界に1枚のストール制作−

東京・世田谷に誕生した緑豊かな新アトリエ

「アトリエシムラ」は、染織家で人間国宝の志村ふくみさんと、その娘で同じく染織家の洋子さんの芸術精神を継承するブランド。伝統を引き継ぐのは、ふくみさんの孫である志村昌司さんを中心とした作り手たちです。京都・嵯峨野のアトリエを拠点に、四季折々の植物から色をいただいて糸を染め、手機で着物やストール、小物などを制作しています。

2025年春、成城に構えていた東京アトリエを祖師谷に移転。1階には緑豊かな庭とショップ、染めなどを行う工房スペースが、2階には広々とした機場（はたば）を備えた新アトリエがオープンします。本プランは、新アトリエにて桜染めのストールを全3回で制作するOtonamiサロン限定のコースです。

五感で感じる桜に秘められた生命

第1回は、講師による桜についてのレクチャーからスタートします。アトリエシムラにとってかけがえのない存在である桜。志村ふくみさんが体験した桜にまつわるエピソードやエッセイなどを元に、桜に秘められた色と生命の神秘を紐解きます。講師とゲストがともに想いを語り合うことで、桜という存在がより身近に、また特別に感じられる時間になることでしょう。

レクチャーに続いて、いよいよ絹糸を桜で染める工程に移ります。桜で染めると聞いて、薄ピンクの花びらを思い浮かべるかもしれませんが、染めに使うのは花を咲かせる前の枝や皮。そんな桜の中に“溜められた色”を受け取り、真っ白の絹糸に宿していきます。色をいただく桜の木が育った土壌や水によって染まる色も繊細に変わってくるそう。五感を使って染めるアトリエシムラの哲学に触れながら、桜の生命の色に向き合いましょう。

自然の融合が生み出す「しむらのいろ」

色を入れては空気に触れさせ、また色を入れる。自然同士の融合が「しむらのいろ」と呼ばれる透明度の高い唯一無二の色を引き出します。幾度となく染めの工程を繰り返し糸に色が入ったら、糸を乾かす時間を使って1時間のランチタイム。持参した昼食をアトリエ内の庭や近くの公園などお気に入りの場所を見つけて味わったり、ほど近い祖師谷商店街を散策がてらランチを楽しんだりするのもおすすめです。

休憩している間にも、桜で染まった糸は太陽の光や風を存分に浴び、色を一層鮮やかなものに変えていきます。ランチタイムにひと息ついた後は、自ら染めた糸で機織りの工程に移ります。

桜の生命の色を織る

第1回のランチの後、そして第2〜3回を通して自ら染めた糸で機織りを行い、ストールを完成させます。通常の体験では、経糸（たていと）には真っ白の糸を使いますが、本コースでは経糸にも桜の糸を使用します。杼（ひ）に糸をセットし、経糸の間に通すように滑らせて緯糸（よこいと）を織り入れたら足を踏みかえて糸の上下を入れ替え、トントンと糸を寄せる。桜と桜の色が織り重なり、世界にひとつの表情が生まれ始めます。

「織りには、その人の心が表れるんです」アトリエシムラ代表・志村昌司さんはそう話します。技術だけで織るのではなく、心象風景やイメージを色に置き換えるのがアトリエシムラの織りの核心。桜染めの糸の他、用意されたたくさんの草木染めの色糸も使うことができます。自分自身と向き合いながら自由に表現する時間を堪能しましょう。

儚くも美しい“美意識の象徴”と向き合う特別なひととき

春、ほんの短い間に咲き誇り、潔く散りゆく桜。志村さんは「刹那の美しさだからこそ、“日本の美意識の象徴”となっているのでは」と話します。慌ただしい日常を離れ、桜の生命と自然の色彩世界に没入する3日間。五感を研ぎ澄ませる特別な体験を、アトリエシムラでしてみませんか。