心ときほぐす、緑の中の手織工房
にぎやかな吉祥寺駅から緑がいっぱいに広がる井の頭公園を抜け、静かな住宅街を縫うように進むと、美しい白壁の一軒家が現れます。「手織工房じょうた」は、さをり織を生み出した城みさを氏の孫・城達也氏が主宰する手織物の工房です。
工房のところどころに、さをり織の創始者・城みさを氏の絵や言葉が飾られている壁の棚には約2,000本ものカラフルな糸が並び、オリジナルの木製の織機が窓に向かって整列しています。どこの席に座るかはその日の気分で。完成図も決まりもなく、自由に織るさをり織。深呼吸すれば自然をすぐそこに感じられる場所で、人間本来の感覚を取り戻しながら、自分らしさを織る体験が始まります。
工房を主宰する城達也氏感覚を頼りに、自由に織り上げる
「差異を織る」という意味が込められたさをり織は、人間だからこそ生み出せる個性が魅力の手織の手法。自由に織り上げるその楽しさは、世界50カ国以上で十数万人に愛されているといわれています。オリジナルの手織り機は扱いやすく、糸がなくなれば簡単に糸替えができます。ペダルを踏み忘れても、それも織物の味わいに。時にはわざと糸を飛ばしたり、引き出したり、原毛を入れてみたり……。織物の固定概念から離れ、自分の感性に向き合うひととき。機械では作れない不規則性や偶発的な組み合わせに心をときめかせながら、自分だけの織物を完成させます。
織る人の個性が自然とにじみ出る、世界にひとつだけの織物に心動かす糸との出合いは、一期一会
工房には、色や太さ、触り心地まで多種多様な糸がずらり。心の目を研ぎ澄ませ、織物に使う糸を選び取ります。手織工房じょうたの教室では、さをり織に残糸(ざんし)を使います。残糸とは、紡績工場で余ってしまい、捨てられるはずだった糸のこと。昨今、残糸を活用して新たな命を吹き込む活動が注目されています。
色や素材の絶妙な違いを見極めながら、感性にゆだねて糸を選ぶ「残糸はなくなったら終わり。でもそれは次の糸に出合うチャンス」と城氏。隣の人が織る糸が目に入り、気になって使ってみるなど、工房ならではの一期一会の巡り合いも楽しめます。
まったく表情が異なる色とりどりの糸は、さをり織によってひとつの作品になる色を塗るように織り、自分らしさを見出す
本体験では、あらかじめ経糸(たていと)を張った織機が用意されています。経糸は通年で綿、緯糸(よこいと)は当日に綿またはウールから選べます。夏季は主に綿、冬季は主にウールをご用意していますが、時期によってラインナップは変動があります。様々な表情の糸との出会いをお楽しみください。
選んだ緯糸をボビンに巻いたら、シャトルに装着。シャトルを経糸の間に通し、足のペダルを踏み替え、筬(おさ)を手前に打ち込むことで1段ができます。糸替えは、シャトルの中のボビンを入れ替えるだけ。気軽に糸を替えたり、ふわりとした原毛や糸くずを入れたりと、色を塗る感覚で織を進めます。
原毛を入れ個性をプラスすることで、オリジナリティあふれる織布に疲れたら、自分のペースでいつでも休憩を。工房の近くには、タイ料理やそば粉のガレット、天然酵母のベーカリーなど、素敵なお店があります。天気の良い日には、買ってきたお弁当を工房のテラスでいただくのも気持ちよさそう。吉祥寺の空気感までも布に織り込み、その時の自分にしか織れない布が仕上がります。
使う糸の太さや質感によって、まったく違った印象の織布に仕上がる(写真は綿のショール)自分によく似合う、世界にひとつだけの手織物
感性を生かして自由に織り上げた布は、不思議とその人によく似合うものに仕上がるそうです。50cm幅で好きな長さまで織ることができるのは、Otonami限定の魅力(最長約2メートル)。出来上がりの織布は、そのままショールやひざ掛けとして楽しんだり、バッグやベストに仕立てたり。クッションや壁掛けパネルにアレンジするのもおすすめです。
フリンジを施した遊び心あるウールの織布はひざ掛けとしても通常プランに加え、素材を変更できるオプション(有料)もご用意。リネン・シルク・ラムウールのいずれか、またはカシミヤへ変更可能です。さらっとした肌触りのリネンとシルクは、春〜夏におすすめの素材。吸水・発散性にすぐれているため爽やかな使い心地です。なめらかな肌触りのラムウールは、秋〜冬におすすめの素材。繊維が細いためチクチクしないのが特徴です。
素材を変更できるオプションで自分好みの仕上がりに工房のスタッフは、織物を教えすぎることはなく、そっと背中を押す程度。体験する人の感性を大切に、その人らしい織物を作れるのがさをり織の醍醐味です。誰にも真似できない自分らしさを、さをり織で表現してみてはいかがでしょうか。
色の配分が大胆なストールは、どの面を出すかで表情の変化を楽しめる