着物を再構築して作る“着るアートストール” −等々力「ミハイルギニスアオヤマ」のアトリエにて−

自然と共にあるファッションブランド

東京都指定名勝のひとつ「等々力渓谷」を有し、大都会のオアシスとして人気の街・等々力。緑あふれる美しいロケーションに佇む「ミハイルギニスアオヤマ（MICHAIL GKINIS AOYAMA）」のアトリエショップには、大きな窓から降り注ぐ外光を受けて揺れる、様々な色と形の美しいストールやドレスが並びます。その様子はまるでアートギャラリーのようです。

ミハイルギニスアオヤマは、日本のテキスタイルに心酔し東京に移住したギリシャ出身のファッションデザイナー・アーティストであるミハイルギニス氏と、プロデューサーであるギニス青山祐子氏が立ち上げたクリエイティブユニット。2021年には、優れたデザインを表彰する国際的なデザイン賞「DFA Design for Asia Award 2021」を受賞し、いま注目されているファッションブランドのひとつです。

唯一無二を創造する贅沢な時間

ミハイルギニスアオヤマの代表的なアイテムである“着るアートストール”は、四角い布を用いた古代ギリシャの服と、日本の着物から着想を得て生まれたもの。本体験は、着るアートストールの中で人気のデザイン「エンジェル・ストール」を、リメイクしたい着物の生地を使い、セミオーダーで仕立てるOtonami限定プランです（手元に着物がない場合は、アトリエに用意された着物生地で制作することも可能です）。

天使の羽からインスパイアされて誕生したこのストールは、スナップボタンで容易に着脱可能。さらに、着る（WEAR）・巻く（WRAP）・垂らす（HANG）という3パターンをはじめとした、さまざまに異なった表情を見せることができる、考え抜かれたデザイン性の高さが特徴です。さっと羽織れるのに、まるで着物を着ているかのようなエレガントな雰囲気に。たたむとコンパクトになり、軽くて持ち歩きやすいのでおでかけや旅行に重宝します。

ストールに使用するミハイル氏厳選の生地や素材は、卓越した技術をもって作られたメイドインジャパンのテキスタイルの数々。ミハイル氏自らがゲスト一人ひとりのイメージや好みを聞いて配色や生地を提案するので、オーダーがはじめてでもご心配なく。一般的に高額になることが多い着物生地のリメイクを気軽な気持ちで体験でき、ミハイルギニスアオヤマならではのオリジナルアイテムへと仕立てる特別な時間を楽しみましょう。

着物に込められた“想い”をまとう

Otonami限定の本プランでは、リメイクしたい着物の持ち込みが可能です（手元に着物がない場合は、アトリエに用意された素材で制作することもできます）。着物は代々受け継がれていく伝統衣服ですが、現代において着る機会はそう多くありません。眠っている大切な着物を、エンジェルストールとして再構築することができます。「特に黒留袖はエンジェルストールのデザインと相性抜群です」とミハイル氏。

アーティストを虜にした日本のテキスタイル

最初にミハイル氏と対話しながら着用イメージを共有したら、さっそく着物生地に合う素材を選びます。ミハイルギニスアオヤマで扱う生地のほとんどは自然素材。どの生地も触れただけで肌に優しくなじみ、その上質さを実感できます。特に注目したいのが「CORNICE（コーニス）」と名付けられた、ミハイルギニスアオヤマの作品に多用されているアイコニックな生地。“蛇腹”という意味を持ち、ギリシャ建築においては軒と柱をつなぐ装飾が“コーニス”と呼ばれることから、人の身体を柱に見立ててこの名前を付けたそう。

コーニスは職人の技術によって約2,000本の経糸が使用されているニット生地のため、高い伸縮性があり、カットしてもほつれにくく、天然素材のならではの風合いがありながら優美なドレープを楽しめます。「この生地に出逢えたことは、私たちにとって本当に幸せなこと」と、ミハイル氏は話します。セレクトの際にはぜひ手に取って、日本が誇る職人技の素晴らしさを感じてみてください。

着物に組み合わせる生地が決まったら、いよいよ最終デザインを確認します。完成イメージを想像しながら生地の配置・配色をミハイル氏と考える工程は、感性が刺激されるクリエイティブな時間。1枚のストールがますます“特別なもの”になります。日本では入手困難なギリシャのお茶と共にティータイムを楽しみながら、コーディネートのアイデアやコツなど、ミハイル氏との会話が弾みます。

エンジェルストールは、オーダー後およそ1ヶ月半～2ヶ月半で完成。オリジナルのボックスに入れてお渡しします。再度アトリエを訪れて直接受け取るか、郵送（送料は別途かかります）でお届けすることも可能です。

世界に冠たる日本の技術を守るために

「日本のテキスタイルは世界に類を見ないほど本当に素晴らしい。特に着物生地の繊細さは唯一無二。触れただけで創作のイマジネーションがあふれてきます」とミハイル氏。しかし、着る機会が減った現代において、箪笥で眠ったままの着物を持て余している人が多いのも現状です。「袖を通す人が減れば、日本の大切な技術が継承されずにいつか途絶えてしまう。その損失はあまりに大きい」と2人は危惧します。

「かたちを変え、素材を組み合わせて仕立てた着るアートストールとの出会いが、着物生地の魅力にあらためて気がつくきっかけになることを願っています」。大切な着物をリメイクして制作したエンジェルストールを身にまとうことは、その人だけの“個性”をまとうことであり、日本の“誇り”をまとうことと同意義なのかもしれません。ミハイルギニスアオヤマでの体験を通して、2人の想いをぜひ感じ取ってみてください。