鎌倉にある趣深き「旧村上邸 −鎌倉みらいラボ−」で学ぶ書の世界
鎌倉駅から20分ほど歩くと、日本の古き良き時代を彷彿とさせる閑静な通りの先に、大きな暖簾を優しく揺らす「旧村上邸 −鎌倉みらいラボ−」の荘厳な表門があらわれます。明治時代末期に建築され、1999(平成11)年に鎌倉市の景観重要建築物に指定された旧村上邸 −鎌倉みらいラボ−。その佇まいからは、時代を超えた美しさと深い趣が感じられます。徒歩圏内には、鎌倉の代表的な史跡である鶴岡八幡宮や、苔の階段で有名な杉本寺、美しい竹林と庭を有する報国寺などがあり、鎌倉の魅力を凝縮した立地も魅力のひとつです。
穏やかな静寂に包まれた茶室本体験は、旧村上邸 −鎌倉みらいラボ−の茶室で書家・白石雪妃氏に書の世界を学ぶOtonami限定プランです。白石氏は伝統的な書の世界を総合芸術に昇華させ、音楽と融合させたライブパフォーマンスを披露するなど、世界各地で幅広く活躍。また、2014年の「FIFAワールドカップ」の折には、日本代表の新ユニフォームのコンセプト「円陣」を揮毫(きごう)したことでも知られています。書の無限の可能性を追求し続ける白石氏のもとで書に没頭し、静寂を愛でるひとときを全5回にわたって堪能します。
書家・白石雪妃氏。伝統的な書の世界をベースに、独自の世界観を広げるべくクリエイターとのコラボレーションにも積極的に取り組む“1枚の半紙”という無限の世界と向き合う
体験の第1回では書道に必要な道具と所作について学んだのち、漢数字の「一」に挑戦します。筆を持つのは教育書道の「習字」以来という方も、筆に含ませる墨の量や手指の添え方まで、白石氏による丁寧な指導があるのでご心配なく。静かな茶室では、文鎮が半紙の上を滑るかすかな音や、筆が墨をゆっくりと吸い上げる音までが聴こえるようです。心地よい緊張を感じながら筆を持ち、目の前の1枚の半紙に向き合います。
1枚の半紙の中に様々な表情の「一」が生まれる字の正しい書き順や美しい書き方を学ぶ「習字」に対して、自分自身の個性や感覚を字で表現するのが「書道」です。「同じ“一”でも太く書いたり細く書いたり、筆の置き方や筆運び、墨のかすれなど、無限に広がる表現を知ることで書道の楽しさを感じてほしい」と白石氏は話します。墨液を使わず、墨を磨るところから体験が始まる本プラン。やわらかな墨の香りを感じながら墨を磨る時間は、リラックスしながらも集中力を高めてくれることでしょう。
「墨は病人に磨らせろ」という言葉があるように、優しい力で時間をかけて磨るのがコツ書を通して自分の心を書く時間
第2回で書くのは「円相」。禅における書画のひとつで、図形の円を一筆で書き上げたものです。書いた人の心が表れることから“己の心を映す窓”という意味で「円窓」という字を使うことも。白石氏も江戸時代の禅僧・仙厓義梵が残した円をお饅頭に見立てた「円相図」に感銘を受け、自身の作品にも円相を多く書いています。
白石氏との会話のなかで、書の世界にさらなる興味が湧く真っ白な半紙に筆を入れ、「逆筆」という運びで筆先を開かせて書いていきます。円は無限や悟り、宇宙などを表現したものとされますが、実際の解釈は書く人・見る人にゆだねられています。白石氏は「同じ円相でも、時間が経ってから見るとまた違った世界を見出せるのでとても不思議なんです」と、円相の奥深い魅力を語ります。
「柳緑花紅」は、“柳は緑色。花は紅色。そのありのままが真実”ということを説いた禅語(中央)第3回では好きな「禅語」を書きます。禅語とは短い言葉や文を通して禅の教えを説いたもの。字の書き順を守ることが唯一の決まりという書道。白石氏のお手本を参考にしながらも、自分の感性に従って書いていきます。
名前と向き合い、自己内観を深める
第4回では、自身の「名前」に挑戦。デジタル化が進んだ今でも、名前を書く機会は多いことでしょう。書道を通して、自己を表すアイデンティティのひとつである名前に向き合うのはとても貴重な機会です。白石氏のお手本とアドバイスをもとに、時間の許す限り筆をふるいます。書き慣れているはずの名前にも新たな発見があるはず。筆を持ち、名前という自己と対話する時間で、さらなる内観の深まりを体感できることでしょう。
第1回〜第4回は、色紙で仕上げるオプションもご用意(ご希望の方のみ / 別途料金がかかります)。書き上げた作品を茶室にある床の間の軸にかけ、記念に写真に収めてみましょう。
書を通じて自分自身を見つめるかけがえのない時間第5回は、オリジナルの「雅印」を制作します。雅印とは落款印の一種で、書家や画家が愛称などを彫刻する印鑑のこと。名前や愛称から選んだ一文字を、雅印専用の石に丁寧に彫っていきます。出来上がった雅印をこれまでに書き上げた作品に押せば、世界にふたつとない芸術品の完成。思い出の詰まった作品を、ご自宅に飾って楽しんでみてください。
※第5回の「雅印」の回にご参加の方は、必ずオプションをお申し込みください。
自分の手で彫るからこそ、思い出も愛着もひとしお“心がととのう”かけがえのない体験を
「書の世界に触れ、心が整っていくのを感じてもらえれば」と話す白石氏。書と向き合う時間は、深い呼吸と癒し、さらに高い集中力を与えてくれます。感覚が研ぎ澄まされた状態では、茶室に座していながらも、外で風が木々を揺らす音や、鳥のさえずり、池の水面を打つ雨音までもが明瞭に耳に届き始めるでしょう。
体験の終わりには、お茶をいただきながら白石氏と共に内容を振り返る時間が設けられている現代に生きる私たちの多くは、情報にあふれた慌ただしい毎日を送っています。そんな日常から自分を解き放ち、時間が経つのを忘れて目の前の書に没頭することは、何にも代えがたい価値ある時間かもしれません。趣ある茶室で書道を学び、感性を育み、心をととのえる……。そんな心豊かなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。