Otonami Story

2023.4.5

唯一無二のアレンジ和菓子。素材を組み合わせる楽しさに導かれた新しい「和」の世界。

Interviewee

和菓子 万くみ 鈴木万久美さん

和菓子教室「和菓子 万くみ」を主宰する鈴木万久美さん。伝統的な和菓子作りの技法を使いながら、お酒やスパイス、ドライフルーツ、果物など様々な素材を取り入れ、新しい和菓子へとアレンジする楽しさを伝えています。

「もともとものづくりが好きというのが根本にあり、素材の組み合わせや、出来上がった新しい味を楽しんでいます」と鈴木さん。基本を押さえながらも個性豊かなアレンジ和菓子は、味わいはもちろん見た目にも美しく、鈴木さん独自のセンスが光るものばかり。

和菓子だけでなく、季節に合わせたラッピングまで楽しめるレッスン内容は「来ていただいた方に楽しんでもらいたい」という想いから。“楽しさ”と“面白さ”を大切に、好きなものをかたちにする鈴木さんの和菓子作りへの想いを、これまで歩んだ“Story”から紐解きます。

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故郷の豊かな自然のなかで培われた五感

淡路島出身の鈴木さん。ご両親の影響で“和のもの”が身近にある環境で育ちますが、幼少期に心を動かしたものは何よりも故郷の自然だったそう。「淡路島は自然が多い場所。雨の日には静かに雨音を聞いたり、晴れた日には太陽のにおいや強い陽の光を感じたり……。そんな何気ない日常の記憶が今も心に残っています」と、当時を振り返ります。

アマレットなどのリキュールを使った和菓子と手作りのラッピング

「和菓子 万くみ」のレッスンの魅力のひとつが、作った和菓子を鈴木さん特製の季節に合わせたラッピングに包んで持ち帰れること。「どんなラッピングにしようかと考える時に、幼い頃に淡路島で見た風景をよく思い出します」と鈴木さん。自然の美しさからイメージされた和紙や飾り紐を使ったラッピングが、現代的なアレンジ和菓子を包み込みます。

材料の性質を知り、広がった世界

大学進学とともに上京し、卒業後は国内・外資系証券会社などに勤務。会社員時代に着付けなどの習い事のひとつとして和菓子作り教室に行ったのが、和菓子作りとの出会いでした。「最初に行った教室にわらび餅を作るコースがあったんです。“わらび餅って作れるんだ”と嬉しくなって、通うことにしました」と笑います。何しろわらび餅は鈴木さんの大好物で、小さい頃からよく食べていたのだそう。

素材の性質を知ることにより、家庭でもアレンジが可能

和菓子作りの面白さを知った鈴木さんは、より本格的に学ぶために和菓子職人の先生が開催する教室へ通うことに。「そこでは和菓子の歴史から材料の性質まで、惜しみなく教えていただきました。材料の性質を知ると、レシピ通りに作らなくても最初に入れる素材や分量の調節の仕方が分かる。そういうことを理解し、アレンジができることに気がついてから、ますます和菓子作りが面白くなっていきました」。

和菓子で自由に表現する楽しさ

「和菓子 万くみ」を始めたきっかけは「和菓子が好きな方や興味がある方と楽しく和菓子作りがしたい」という想いから。もともとお酒が好きだった鈴木さんは、和菓子にも使ってみたいという気持ちから試作を繰り返し、今のアレンジ和菓子のスタイルを確立しました。素材の性質を生かしながら、お酒やスパイス、果物やナッツなど様々な食材を組み合わせて作る特別なアレンジ和菓子教室は好評を博します。

2011年頃から和菓子作りを始め、2017年頃「和菓子 万くみ」を開くことに

和菓子教室を始めた頃、古典文学をイメージした和菓子を公募する「京菓子展」へはじめて応募し、2018年から三度にわたって受賞。「心に思い浮かんだものを和菓子にするのはなんて面白いんだろう、と思いましたね。物語の場面や情景を、和菓子の素材、色、質感などを使って表現するのがとても面白かったんです」。自分で素材の組み合わせを考え、形にしていく楽しさが、今も変わらず鈴木さんの和菓子作りの軸となっています。

基本を知ることから始まる和菓子作り

レッスンでは、和菓子の基本からアレンジする時のコツまで丁寧にレクチャー。Otonamiの体験では「和菓子を作る楽しさを一緒に感じてほしい」と鈴木さんは話します。「手作りの良いところは自分の好きなようにアレンジできること。お酒が好きなら、お酒を少し多めに使ってみようとか、さっぱりとした味つけが好みなら、フルーツをふんだんに入れてみようとか」。素材の性質から教えてもらえるからこそ、自分だけのアレンジ和菓子を作ることができる和菓子 万くみのレッスンは、リピーターも多く、地方から参加する方や海外からの一時帰国時に足を運ぶ方もいるそう。

季節の素材を使ったオリジナリティあふれるレシピが好評

さらに、作った和菓子を飾るラッピングにも鈴木さんのこだわりが込められています。「綺麗にラッピングをしたらよりおいしく見えるし、帰り道まで楽しくなる」と、厳選した和紙や、解けにくいアジアンコードを飾り紐に使うなど、一つひとつ鈴木さんが手作りしたものを用意。季節の移ろいを繊細に表現したラッピングは、レッスンの世界観や空気感をそのまま持ち帰ることができます。

新しいインスピレーションを得て、より深く和菓子の世界へ

今後の活動について、「企業とのコラボレーションに積極的に取り組みたいです。例えば、企業をイメージした和菓子を作ってみたい。世の中の流れや人のニーズが組み合わさると、もっと和菓子作りが面白いものになるんじゃないかと思うんです」と鈴木さんは話します。

目に楽しく味わいも豊かなアレンジ和菓子

「自分にとって和菓子とは、作る楽しみを与えてくれるもの」と鈴木さんが話す通り、0からつくり出す楽しさを存分に感じることのできるアレンジ和菓子作り。自分の好きな材料で自由に和菓子が作れると知れば、和菓子がより身近に感じられるのではないでしょうか。伝統的でありながら新しい和菓子 万くみの自由な発想は、とどまることを知りません。

和菓子 万くみ

2001年頃から和菓子作りを始めた鈴木万久美氏が「手作り和菓子を身近に楽しんでほしい」という想いから主宰する和菓子教室。古典文学をテーマにした京菓子で、茶席菓子実作部門 優秀賞をはじめ数々の賞を受賞。伝統的な和菓子から、フルーツやお酒を使ったアレンジ和菓子まで、様々な場面で楽しめる和菓子を指南する。

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なし

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