香りを軸にお茶を楽しめる「茶と菓と いい日」
閑静な芦屋の住宅街にひっそりと佇む「茶と菓と いい日」。“香りを楽しむ”をコンセプトにしたお茶を提供し、地元の人のみならず遠方からのリピーターも多い人気店です。非常に希少とされる日本古来の茶葉「在来実生(ざいらいみしょう)」を4種類も扱っていることも同店の特徴。そのほか、日本を代表する農家の和紅茶や極上の中国茶、台湾茶など、季節ごとに茶葉を常時10種類以上取りそろえ、手作りのお菓子とともに提供しています。
柔らかな光が差す店のエントランス。中へ進むにつれてお茶の良い香りが広がる店主の松本康生氏は元バリスタ。コーヒーの世界に身を置いていたとき、偶然口にした煎茶の香りの奥深さに衝撃を受けたことがきっかけで日本茶の虜になったといいます。以来、茶農家やお茶づくりの現場に幾度も足を運ぶうちに「お茶に携わる人の想いと、丁寧につくられたお茶の魅力を伝えたい」という想いが膨らみ、自らの店をオープンしました。
店主の松本康生氏。丁寧な説明でお茶の香りの世界を教えてくれる現在も、著名な茶人・堀口一子氏に師事し、月に一度はお茶の時間をともにして研鑽を積んでいるそう。また、百貨店での催事に出店したり、お客様から要望の多かったお茶会を開催したりと、幅広くお茶の魅力を発信しています。
その年にしか出会えない一期一会の香りを
まずは、お茶の歴史や特徴、季節のお茶について学びます。兵庫が誇る港町・神戸は、開港以来、海外の様々なお茶が輸入され、現在も紅茶消費量が全国トップクラスと「お茶好きの街」として知られています。「関西でお茶といえば京都が連想されがちですが、海外のお茶になじみ深い兵庫からも、お茶の魅力を発信していきたいですね」と話す松本氏。全国の茶農家をめぐって培った確かなお茶の知識と目利きの技術により、緑茶、白茶、紅茶、青茶などのお茶の違いや産地による特徴を教わります。
扱っている茶葉は日本茶や和紅茶、中国茶など多岐にわたる同店が扱うお茶の中でも、特に注目したいのが「在来実生」とよばれる、もともとその土地に存在する種や実から育てられた茶葉(※)。品種改良された茶葉とは根の形がまったく異なり、素朴ではありながらも力強く、同じ種でもすべて違う個性に育つそう。今では市場流通量も1〜3%ほどの希少な茶葉です。「本来の自然の生命を感じさせるインパクトのある香り」という言葉に、香りを楽しむ時間が待ち遠しくなります。
※在来実生のお茶は季節や入荷状況などにより提供できない場合もありますので、ご了承ください。
「茶葉は季節や寒暖差、標高など人間には作り出せない自然の力が生み出すもの。その年にしか出会えない一期一会の香りです」と松本氏自宅でも再現できる、香りを楽しむお茶の淹れ方
次は、実践としておいしいお茶の淹れ方を学びます。茶葉は3種類をご用意。うち1種類は中国福建省の武夷山(ぶいざん)にて伝統製法で栽培された岩茶「高山肉桂(こうざんにっけい)」といった通常お店では提供していないお茶をOtonami限定で味わいます。茶葉1種類につき3煎を味わい、各工程もしっかりとレクチャーがあります。お茶によって香りを際立たせるための淹れ方や器の形も違うといい、香りを楽しむことを重視した淹れ方を教えてもらいます。
香りが際立つようにお茶ごとに合わせた特注の器を使用しているそう中国茶や和紅茶など日本茶に比べて少しなじみが薄いようなお茶を日常生活に取り入れるポイントや、自宅での茶葉の保存方法を聞くこともできます。当日はOtonami限定の解説資料が配布されるので、好みの淹れ方を書き留め、自宅でも試してみましょう。
香りにフォーカスしたお茶を味わえる貴重な体験飲み比べとお茶に合うお菓子を味わう特別な時間
いよいよお待ちかねの飲み比べタイムです。飲むペースを見計らって、味の違いを説明しながら3煎淹れてもらえるので、1煎目、2煎目……とお茶の香りの違い、見た目、味わいなどをじっくり堪能しましょう。
お湯を入れる前と後でも、香りや旨みが異なるおいしいお茶とともに、その日のお茶に合うよう松本氏がセレクトしたお菓子もいただきます。たとえば、油分と相性の良い中国茶にはバターフィナンシェを。口に広がるバターの味わいと淹れたてのお茶のフレッシュな香りに、思わずうっとりしてしまいそうです。
お菓子も季節のお茶とペアリングを楽しめるようセレクトお茶を通して、幸せやご縁がつながるように
「茶農家や関係者の方々が丹精込めて育てた茶葉をお預かりしている気持ちで提供しています。この店を訪れた方が、いい時間、いい日を過ごし、いいご縁に出会える。そんな幸せをつなぐ空間になれたら嬉しいですね」。店名に込められた松本氏のあたたかい想いがにじみ出た空間でお茶について学び、五感で楽しむ時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
3種類飲み終わるころには早速自宅でも淹れてみたくなっているはず上質な時間を過ごせる名店が揃う芦屋。この土地で、茶葉や茶農家を守っていくために、お茶の歴史や文化を大切にしながらも香りに特化した淹れ方でお茶の魅力を発信する「茶と菓と いい日」。自分好みの一杯を見つけて、香りのリラックスタイムをお愉しみください。
木を基調にした店内でほっとひと息