
Otonami Story
2023.9.27
人間模様や社会の“絡まり”を書に託して。歪みを飲み込み、時代を記録する。
華雪
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Exclusive
こちらの体験は開催を終了しております。読み物としてお楽しみください。
8,000円〜(名/税込)
1〜10名
約180分
書家として精力的な作品制作を繰り広げてきた華雪氏。幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典に触れたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、文字の成り立ちを綿密にリサーチし、現代の事象との交錯を漢字一文字として表現する作品づくりに取り組んできました。集英社創業85周年特別企画「戦争×文学」の題字揮毫をはじめ、書籍の題字も手がけています。
華雪氏が導くのは、己の心と向き合い表現する書。その根底には、時代や社会情勢などが作り出した一定基準の美しさへの疑問があります。「“美しいってなんですか?”と、あらためて皆さんに問いかけたいのです」と話す華雪氏。書を通じて形なき美を模索することで、自己内観を深め、卓上の創作でありながらも旅に出たような達成感を味わえることでしょう。
会場となるのは、九段下駅から徒歩2分ほど、築95年の近代建築ビルの2階にあるギャラリー「GOTTA九段下」。新旧どちらの雰囲気もなじむこの場所で、ほどよい静けさと居心地の良さを感じながら書と向き合うことができます。
全5回の体験では、2つの相対する形容詞の組み合わせ(重い・軽い/柔らかい・固い/大きい・小さい など)をテーマに、それに結びつく漢字を書いていきます。例えば「重い・軽い」をテーマとする回では、「心が重い」「心が軽い」という表現がある「心」が結びつく漢字として挙げられます。そしてその漢字の成り立ちについて、華雪氏の解説を聞き、辞典を使って学びます。
漢字は小学校で習うような親しみのあるものからピックアップされますが、いざそのルーツを調べると、知らなかった一面に出会うことも。教養を深めながら、この後の創作のヒントを得る貴重な時間です。
漢字について理解を深めたあとは、筆と墨の取り扱いについて学びます。墨のすり方や筆の持ち方など基本的な作法を教わりますが、これらは華雪氏曰く文字を書くための作法ではなく、筆で書くことができる線の可能性を試すための技法を知るための時間。学生の頃に学んだ習字の基本は、いったん頭の片隅に置いておきましょう。
この日使用した筆は、イタチの毛から作られたもの。イタチはしっぽを引きずって歩くため自然と毛先が尖り、しっぽの毛が重宝されているのだとか。墨は、松脂をベースとした松煙墨。涼しげな青系の黒色が特徴で、油の粒子が粗く光をたくさん通すため、淡い色で書くと美しさが際立ちます。同じ線でも、用いる道具によってまったく異なる表情になるのが面白いところです。
まずは線を書きながら、形容詞通りの表現に挑戦します。「重い」であれば筆をずんと半紙に沈めるようなイメージで、「軽い」であれば筆を軽やかに滑らせるイメージで……。最初はぎこちなくても、何度も書くうちに変化があらわれます。大切なのは、自分のリズムで筆を滑らせること。少しずつ自分の納得のいく表現へと近づけていきましょう。
次はいよいよ漢字を書きます。先ほどと同様に形容詞を意識しながら筆を動かし、さらに、今の感情をも投影していきます。重い気分か、軽い気分か、柔らかい気分か、小さい気分か。それを表現する筆づかいは、墨の濃さは、見た目のボリュームは……。自分の心の琴線に触れる表現を目指し、様々なパターンを試します。
自分の心を目に見える形でさらけ出す創作はある種の勇気を伴いますが、「自分自身で物語をつくっていい」という華雪氏の導きに背中を押されます。気づけば筆が止まらないほど無我夢中になってしまうかもしれません。
2024年5・6月の回には、歴史的に書と結び付きの深い篆刻を体験し、ご自身だけの印章を作ります。まずは「わたし」を表す一文字を選び、その成り立ちを知ることからスタート。文字をデザインし、彫刻刀に似た印刀と呼ばれる道具を使って、柔らかい石に文字を彫ります。完成した印章は、これまでの体験の仕上げとしてご自身の書に捺したり、手紙やはがきなどに彩りを添える日常的な印として使ったりすることができます。
篆刻には、捺したときに文字が白く周りが朱くなる「白文(凹版)」、捺したときに文字が朱く周りが白くなる「朱文(凸版)」とがあります。白文で得た技術が朱文に生かされるため、2回連続での受講をおすすめします(※朱文のみのご参加の場合は、制作時間が多くかかることをあらかじめご理解ください)。篆刻を体験することで、書に対する理解が一段階深まり、書の技術力や表現力がさらに磨かれるでしょう。
最後は華雪氏による作品の講評と感想会です。自分の心情をどのように表現したのか、あらためて言葉で発表し伝えます。他の参加者の発表を聞いたり、華雪氏からコメントをもらったりすることができるのも、本体験の醍醐味です。自分だけでは想像しえなかった視点が、新たな刺激を与えてくれることでしょう。
人の価値観はさまざまだからこそ尊い。それは芸術分野だけではなく、生きるうえでも大切な気づきとなるはずです。自分なりの美しさを尊重し表現する喜びを、華雪氏の手ほどきのもと体感してみてください。

提供
書家・華雪

提供
GOTTA九段下
書道の概念が変わりました。自由に表現でき、それを良しとしてくださる先生がいて、とても気持ちよく楽しめました。字の綺麗さに自信がなかったため最初は不安もありましたが、まったくの杞憂で、絵を描く感覚でトライできます。先生のお考えや物腰の柔らかさも本当に素敵で、初回でファンになりました。
東京都 30代 女性
今まで、書道はお手本通りに美しく正しい字を書けるかが大事と思いながら生きてきました。今回はじめて書家・華雪先生の講義を受けさせていただき、元々字は人の祈り(想い)の言葉を残そうと書き連ねるところから始まり、そこに美醜の概念はなかったというお話にとても感動し、納得しました。そして、華雪先生の《美しい字とは何なのか》という問いかけがとても心に残りました。実際に心と身体と墨と筆を繋げて書く体験を、「重い / 軽い」というテーマを通して体験させていただき、子どもの時のように心から楽しい、あっという間の時間でした。子どもの頃、はじめて文字を習って書き始めた時は書いていること自体が楽しくて、心の感覚と身体の感覚と道具の繋がりを無意識に感じながら楽しんで書いていたことを思い出しました。次のテーマもタイミングが合いましたら、是非申し込ませていただきたいと思います。貴重な楽しい講義をありがとうございました。
千葉県 40代 女性
書家の方に教わる体験は人生ではじめて。少し緊張していましたが、迎えてくださった華雪さんは凛としたお姿の中にたおやかさもあって、自然と和みの感覚に包まれました。そしてテーブルに置かれた硯、筆、墨の堂々とした佇まいに惹きつけられ、体験へのわくわく感が湧いてきました。お席は満席で、皆さんそれぞれに好奇心をお持ちの方ばかり。文字の成り立ちから書のお道具の辿ってきた長い歴史、華雪さんの幼い頃からの書へのロマンなどのお話を夢中で聞いては質問もして、2時間では足りないくらいでした。硯で磨る墨のいい香りに癒されながら筆の感覚を覚える作業の後、漢字の「心」を作品に仕上げました。不思議と自分の深い思いに集中し、心と呼吸が一体だと体験できたことは驚きでした。「〈書〉は生活のあらゆることに繋がっていて役立っています」という華雪さんの言葉は印象的でした。それを是非とも味わってみたいので、次の回も引き続き体験したいと思っています。
東京都 60代 女性