かな書の伝統を現代に受け継ぐ書家一族
「昭和の三筆」と称された書家・日比野五鳳氏(1901-1985)を初代とし、京都で活躍してきた日比野家。日比野五鳳氏は日本の書の歴史に名を残し、続く2代目・日比野光鳳氏(1928-2023)ともども、芸術院会員を務め、文化功労者に顕彰されました。3代目・日比野博鳳氏(1960-)も日展文部科学大臣賞を受賞し、日展などで活躍。そしてギャラリーの代表を務める、4代目にあたる日比野由佳氏まで直系で続く書家一族です。
烏丸通沿いに建つ「書ギャラリー きよら」「書ギャラリー きよら」は、かな文字が発展してきた京都御所の目の前にあります。ここでは、和歌や文学と共に花開いた文字の芸術「かな書」の伝統を引き継ぐ、五鳳氏・光鳳氏・博鳳氏の三代にわたる作品を主に展示。個性的な多角形の建物は宮大工が手がけたもので、柱を囲む楕円のテーブルでワークショップが行われます。平安文化の発信地である京都御所のそばで、かな文字を芸術に高めたかな書の体験を楽しみましょう。
平安時代から1200年以上の歴史をたどる書の体験
日本独自の文字である「かな」。まずは平安時代に広がったかな文字の成り立ちや歴史、日比野家の各書家の作風などについて、オリジナルの資料を使いながら学びます。岐阜から京都に出てきた初代・五鳳氏は、平安古筆をベースとし、流麗な線で高い評価を得て昭和を代表する書家の一人となりました。京都生まれの光鳳氏は、気品ある雅な世界を書で表現。博鳳氏は先達の融合を試み、都会的ですっきりとした作風で知られています。
ギャラリーや体験講座をプロデュースする、4代目の日比野由佳氏ギャラリー内では随時掛け替えが行われており、五鳳氏や光鳳氏が手がけた様々な作品を見学することができます。五鳳氏が弟子の添削をした朱入れの実物や使用していた筆など貴重な品々が、本プランの参加者へ特別に公開されることも。名人たちの足跡をたどることで、かな書をより身近に感じられるでしょう。
五鳳氏が実際に使用していた貴重な道具を見られることも墨の香りに誘われるアート体験
かな書の練習の前に、墨を磨る(する)ことから始めます。墨は、金色で「鳳」の文字が入ったオリジナルのものを使用。だんだん広がってゆく墨の独特な香りに、非日常感への期待が高まります。また、本プランで使う筆は、かな書を書きやすいよう博鳳氏がプロデュースした細筆です。
墨を磨ると立ちのぼる独特の香りが心を静めてくれる細筆をはじめて手にする人も久しぶりに持つ人も、筆の持ち方や書き方を講師に教えてもらえるので安心です。筆は真っすぐ立てて持つこと、曲線は腕自体を円を描くようにして書くことなど、上手く書くコツをレクチャー。2つのかな文字をつなげて書く練習も行い、慣れてから清書に進みます。
筆の持ち方や動かし方なども丁寧に教えてもらえる心を落ち着かせて“かな書”と向き合う
作品の題材の見本は、本プランのためにセレクト。万葉集をはじめとする和歌、俳句、季節の言葉、京都の伝統行事や慣習に関連した言葉などが用意されています。豊富な見本はすべて3代目・博鳳氏がしたためたものです。参加が2回目以降の方は、ご希望により変体仮名などを用いた作品を制作することもできます。
扇に書くかな書の見本の一例。お気に入りの言葉を選ぶ扇の作品では、3〜8文字程度の言葉を選びます。さらに装飾用の千代紙を2枚セレクトし、好みの組み合わせでコラージュしながら完成を目指します。清書は墨だけでなく金や銀の顔彩で書くことも可能。はじめて筆を持つ方や華やかな作品をつくりたい方におすすめです。
扇の作品は千代紙を自由にコラージュしてつくりあげるオプション(有料)で、制作する作品を色紙に変更することができます。土台となる色紙は、様々な絵柄の中からお好みの1枚を選択。扇よりも少し長めのフレーズを題材にし、文字のつながりや、文字を配置する空間にまで意識を向けながら書作品の完成を目指します。文字を書くことに没頭しながら、かな書らしい作品をつくりたい方におすすめです。
色紙の作品には和歌の下の句を書くのがおすすめかな文字や日本語の美しさを見つめ直す
平安時代の京都で生まれ、洗練された美しさを持つかな書。「現代社会では、書道への関心や体験する機会が減ってしまっています。この体験を通して、筆を持つ楽しさに触れて、受け継がれてきた文字文化の良さを思い出すきっかけとなれば嬉しいです」と由佳氏は話します。
脈々と受け継がれてきたかな書の美しさに触れる時間書の名家の歴史が詰まったギャラリーで、心を落ち着かせ、文字の芸術と向き合う非日常の時間。長い歴史のなかで培われてきたかな書の素晴らしさを体験しに足を運んでみてはいかがでしょうか。