アロマコロジー研究家に学ぶ心をときほぐすかおりの世界 −広尾のギャラリーにて季節の薬膳茶付き−

重なる“和”をもって人と人をつなぐギャラリー

渋谷区のなかでも洗練された空気が漂う広尾エリア。都会の喧騒から離れ、住宅街を抜けると見えてくるのは、本体験の会場「和々nana」です。四季の移ろいや、日本の美を肌で感じられる和文化サロンとして、2017年にオープンしました。一歩足を踏み入れると、またたく間に和を感じる空間へ引き込まれます。

和食器や漆喰の壁など、日本古来の美を取り入れつつもどこかモダンな雰囲気の和々nana。現代的な和の要素を散りばめることで、茶道や陶芸といった歴史ある文化を気軽に楽しめる空間となっています。

和々nanaの「和」には様々な思いが込められており、「和を以て貴しとなす」という古来の教えから、人と人をつなぎ心を重ねながら、平和や調和をもたらす場所でありたいという願いも。また、入口の建具に施された伝統工芸品の組子は、その重なり合った“和”がモチーフとのこと。「ひとつの和ではなく、いくつもの和が重なり合った場所で、日本の美しい和ごころを育む時間が生まれると思うのです」と、おかみの峯田さゆり氏は話します。

薬学の世界から「かおり」へたどり着いた研究家

本体験は、和の心を育む和々nanaにて、季節をまとうかおりの世界を堪能する、Otonami限定の特別なプラン。講師は、かおりと心理学から生まれた「Aromachology（アロマコロジー）」を研究する久保田洋子氏です。薬剤師からキャリアをスタートし、長年にわたり大学の薬学部教授として第一線で活躍。「薬」を通じて人々の心身をケアする研究をするなかで、老化に伴う脳の可塑性（かそせい：脳の神経細胞群が生まれ変わることで新たなネットワークが構築されること）に着目し、刺激のひとつである「かおり」 の世界につながったといいます。

「身体の危機管理において、五感のなかで最も早くリスクを感知するのが嗅覚です。そうであるなら、かおりは身体だけではなく心も守ることができるのではないかと考え、さらにかおりの研究を進めました」。現在、久保田氏が関わるアロマコロジーの講座やワークショップは人気を博し、年齢や性別を問わず悩みを抱える多くの人から支持されています。

研究家だからこそ、科学的根拠もしっかりと押さえた久保田氏のアロマコロジー。本体験では、5つの要素からなる自然哲学の「五行説」に基づき、身体の養生を学びます。また、日本の暮らしにおけるかおりの歴史を辿るレクチャーも。「人の心や身体への効能を理解すれば、自信を持ってかおりを活用することができますよ」と久保田氏は話します。

かおりを理論で知り、五感で楽しむ

かおりの基礎知識を習得したら、オリジナルのアロマクラフトをつくります。久保田氏が用意した20種類の精油のなかから、3～5種類ほどを調香し、自分だけのかおりをつくりましょう。アロマと聞くと西洋由来の植物を想像するかもしれませんが、本体験のもうひとつのテーマは“和”。精油のなかには金木犀などもあり、古来より日本で親しまれてきた香りを選ぶこともできます。

実はかおりにも相性があり、理論で説明できるのだと久保田氏はいいます。調香に用いる精油の種類は、ハーブや花の根、柑橘など多種多様。いくつかのグループに分類された精油のなかから、まずは自分が好きな香りを1～2種類選択します。すると、かおりの原理に基づいて、素敵な仕上がりになりそうな組み合わせを久保田氏がアドバイス。かおりのプロフェッショナルのもとで、気負うことなく、純粋にかおりを楽しみながら調香することができます。

気になる精油をブレンドしていくと、ふわりと漂う新しいかおりの世界。「一つひとつのかおりを意識して、組みわせるとどのような化学反応が起こるのか。ぜひ、ご自身で感じていただきたいです」と久保田氏。最初に嗅いだかおりとの違いに驚く人もいるのだとか。既製のフレグランスでは感じられない、“本物のかおり”を知ることができる貴重な機会です。

本体験でつくるアロマクラフトは月替わり。ハンドクリームやアロマスプレー、リップクリームなど、日々の暮らしに寄り添うアイテムを制作します。また、二十四節気など日本ならではの季節を想定したかおりのテーマも、月ごとに異なります。例えば3月は、「春風」をテーマに気軽にかおりを身にまとうことができるロールオンタイプのアロマオイルを制作。春から始まる新しい生活のなかで、心が落ち着くかおりに出会える嬉しい機会です。

ブレンドの配分や抽出温度で変わる、奥深き薬膳茶の世界

アロマクラフトを制作した後は、“かおりを味わう”ひととき。久保田氏が厳選した花や果実、ハーブなどをブレンドした月替わりの薬膳茶をいただきます。オリジナルのレシピは、季節や気候によって変わるそう。春の訪れに合わせたのは、バラの蕾の玫瑰花（まいかいか）、ユリの蕾の金針菜（きんしんさい）、サンザシ、菊の花、竜眼、グリーンレーズン、クコの実、ハスの実。移りゆく季節に想いを馳せる、至福のティータイムです。それぞれの花や食材が持つ効能について、久保田氏に聞いてみましょう。

薬膳茶と共に用意されたお茶菓子を嗜みながら、笑顔が絶えない久保田氏との歓談。まずは、淹れたてのお茶を味わいましょう。ブレンドされる材料によっては、お湯の温度や経過時間で抽出される成分が変化することがあるのだそう。淹れたてはすっと鼻を抜けるさわやかな味わい、少し時間が経てば華やかな甘みを感じるなど、一つひとつのかおりの奥深さを、心ゆくまで楽しみましょう。

日常を彩る自分だけのかおりづくり

「この場所でかおりをまとう時間を過ごすことが、ご自身の心を大切に思うきっかけになれたら嬉しいです」と、共に語る久保田氏と峯田氏。癒しのティータイムでは、かおりについて気になることや、日々の暮らしへの取り入れ方など、かおりの研究家である久保田氏に聞くことができます。

久保田氏のアドバイスを受けながら自分で調香したアロマクラフトは、エビデンスや愛着が詰まった世界にひとつだけのアイテム。ポーチやバッグ、デスクの上など、いつでも手に取れる場所へ置けば、そのかおりは日常を豊かにしてくれるでしょう。和を感じるギャラリーで季節をまとうかおりの世界に触れ、心を育むひとときを過ごしてみませんか。