名古屋・八事「レストラン カミクラ」歴史的な邸宅の建築ツアー −チーズと銘茶のペアリング付き−

名古屋屈指の高級住宅街に佇む、和洋が融合した別荘を訪問

名古屋市中心部から電車で約30分ほどの市内屈指の高級住宅街・八事（やごと）。戸建ての大きな家々が立ち並び、大学も点在する文教地区です。この地にひっそりと佇む邸宅「八事石坂の家」に店を構えるのが、「Restaurant Kamikura（レストラン カミクラ）」です。

八事石坂の家が建てられたのは、約100年前。愛知馬車鉄道（後の尾張電気軌道）を設立するなど、当時は未開の地であった八事エリアを行楽地として開発した実業家・江口理三郎（1856-1926）の別荘として造られたものです。建築を担当したのは、岐阜県下呂市の温泉旅館「湯之島館」をはじめ、東海地区で今なお残る数多くの建物を造り上げた建築家・丹羽英二（1897-1980）。八事石坂の家は、理三郎が彼に「自由に造るように」と依頼して出来上がったといわれています。

Restaurant Kamikuraのオーナー・神倉仁司氏と明子氏の夫妻は、もともと八事で別のフレンチレストランを営んでいました。その後、縁あって八事石坂の家に店を構える運びとなり、店名も新たにRestaurant Kamikuraをオープン。かつて人々が集い、文化の発信地でもあったこの邸宅から新たな食文化を広げていきたいという想いを胸に、日々多くの人を迎え入れています。

長きにわたって愛される、名建築の歴史をたどる

最初に、館内をぐるりと一周するツアーに出発します。驚かされるのは、約1世紀前の建物とは思えないほど館内が美しく保たれていること。戦前戦後の激動の時代を超えて、理三郎夫妻の亡き後も子息たちによって改築や修繕が重ねられ、今なお建築当時の面影を色濃く残しています。

まっすぐに伸びる美しい廊下を歩いたり、一つひとつ意匠の異なる部屋をじっくりと見学したり。多くの人々に親しまれたこの邸宅を、丁寧に慈しみましょう。ツアーを案内してくれるスタッフから、見どころや建物にまつわる貴重なエピソードを聞くこともできます。邸宅全体を見学し終える頃には、この場所が一層愛おしく感じられるはずです。

新たな世界に出会える、こだわりのチーズと銘茶のペアリング

館内建築ツアーを楽しんだ後は、いよいよチーズと銘茶のペアリングを体験します。このペアリングは、「和の建物で洋の料理を提供している私たちのコンセプトに近いものを」と、チーズプロフェッショナルであり、茶道もたしなむ明子氏が考案したものです。

異色の組み合わせのように感じられますが、ひとたび味わえば驚くほどの相性の良さ。濃厚で芳醇なチーズの風味を、個性豊かなお茶がすっきりとさわやかに仕上げてくれます。それでいてチーズの魅力も堪能できる絶妙なバランス。身近なチーズとお茶が織り成す斬新な美食体験に、思わず満足のため息が出てくるかもしれません。

チーズは「カマンベール・ド・ノルマンディー」などの白カビタイプ、「コンテ」などのハードタイプ、「エポワス」などのウォッシュタイプの3種類を味わえます（※チーズは入荷状況により変更となる場合もございます）。チーズとお茶の特徴については、明子氏か専門スタッフから丁寧なレクチャーを受けられます。チーズをパンと合わせたり、食べる順番を変えたりすると、また異なる味わいに。知見を深めながら食の奥深さを感じられる貴重なひとときとなるでしょう。

風情ある和室でゆったり茶席を楽しむ

締めくくりに、理三郎の子孫である江口家の好意により、館内の和室でお抹茶とお菓子をいただきます。和室は、オーナー夫妻も数えるほどしか足を踏み入れたことがないという貴重な空間。Otonamiプラン限定で体験できる特別な茶席です。

お茶の深い味わいと旬の食材を使ったお菓子の優しい味わいに心癒やされます。これもまたひとつのペアリングだといえるでしょう。庭園をゆっくり眺めつつ、体験を振り返ってみてはいかがでしょうか。

建築美に触れながら過ごす優雅な時間

江口理三郎は、「人が集まる賑やかな場所となり、文化の発信地となってほしい」と八事を開発しました。別荘として建てられたこの邸宅にも、きっと彼の想いが詰まっていたのでしょう。100年の時を超えて、八事の地を愛する神倉夫妻が和洋の食文化を伝えるレストランとして人々をもてなす様子は、まるで彼の願いが現代に実現したかのようです。

伝統的な和館とアール・デコの洋館が融合した館内を巡り、天気や時間帯によって異なる雰囲気や、四季折々の庭園を堪能する本プラン。チーズと銘茶の新たな出会いに感動し、お抹茶とお菓子と共に余韻を楽しむひとときも特別な思い出として残ることでしょう。数々の「一期一会の出会い」が待つ邸宅に出かけ、八事の歴史に思いを馳せながら、ゆったりと過ごしてみてはいかがでしょうか。