代々木上原「çayca」五感で愉しむ月替わりの茶事体験 −茶道とアシェットデセールの類なき融合−

茶道×フランス菓子。和と洋が融合するデザートレストラン

東京・代々木上原に佇む新進気鋭のデザートレストラン、çayca（サイカ）。目の前で点てる抹茶と出来たてのアシェットデセールを、茶道における“茶事”に見立てて表現したこれまでにないオリジナリティを持つ店です。店名の由来は「茶（ça）」と「菓（ca）」を、フランス語で場所を表す中性代名詞の「y」でつないだ造語。2024年のオープン以来、日仏が融合した新しい体験を提供しています。アシェットデセールとは、お皿に盛り付けたデザートのこと。まるでアートのような美しさから「皿の上の芸術」とも呼ばれています。

ビルの一角にある店内に入ると、シェフパティシエがこれまで勤務してきた老舗フレンチレストランをイメージしたという、品格のある調度品がお出迎え。都会の隠れ家の如く静かな空間が広がり、まるで洋館に来たような感覚になります。

シャンデリアをくぐり重厚な扉を開けると、奥には仕切りのない2畳ほどの茶室があり、静寂の中で異彩を放ちます。和と洋のクラシックな趣が絶妙なバランスで共存し、美しい調和を生み出しています。

名門レストラン出身のシェフパティシエと表千家教授の共演

çaycaのシェフパティシエ・栗原薫氏は、日仏の辻調グループ校で学んだ後、「ベージュ アラン・デュカス東京」をはじめ都内屈指の星付きレストランに勤務。「シェ松尾・松濤レストラン」や芝公園にある「レストラン クレッセント」ではシェフパティシエを務めました。料理のフルコースのフィナーレを飾るデザートを任されていた栗原氏は、単純にお腹を満たすものではなく、見た目やシチュエーションから心を満たすデザートを追求。感情やインスピレーションを込めたアート的側面を持つ食の在り方に関心を抱きます。

一方、表千家教授の白井智子氏は、茶道家であるお母さまの影響で幼少期より茶道に触れてきました。社会人になるとパティスリーなどで経験を積み、さらに学びを深めるために渡仏。ル・コルドン・ブルー パリ校を卒業し、現地の星付きレストランで腕を磨きます。帰国後は栗原氏と同じく「ベージュ アラン・デュカス東京」で活躍。その後、飲食店のメニュー開発や新規店舗の立ち上げにも携わりました。また、パティシエとして活動する傍ら、茶道の流派・表千家での本格的な稽古にも通い、2013年に最高位の免状「盆点」を取得。2024年には表千家教授となり、茶道文化の普及に努めています。

日本人でありながらもフランス菓子と密接な関係だった両氏は、「私たちだからこそできる独自のデザートスタイルはないか」と模索。その結果、それぞれの強みを活かし、お点前付きの抹茶とアシェットデセールを提供するデザートレストランçaycaが誕生しました。Otonami限定プランでは、通常のメニューにはない、月替わりのテーマとその日の旬を掛け合わせた特別なコースを味わいます。本体験を通して、2人の新境地開拓への気概と、揺るぎない実力を存分に感じられるでしょう。

テーマに合わせた季節の抹茶とアシェットデセールのフルコースを愉しむ

まずは白井氏による茶道のお点前から。カウンター席に座ったまま、リラックスして鑑賞できます。洗練された動きで抹茶を点てる姿は、伝統的な所作の美しさが印象的。また、茶筅や釜、畳が奏でる小さな音が心地良い癒しに。時折、茶道の作法に関する解説も交えて進みます。「厳かな茶会とは違った、フランクな場にしたいと思っています。気になることは遠慮なく聞いてくださいね」と白井氏。季節で変わるしつらいや茶道具、それらにまつわるエピソードにも注目です。

抹茶をおいしくいただいたら、アシェットデセール2品の登場です。どちらも栗原氏が目の前で仕上げのデモンストレーションを披露。繊細なパーツを組み合わせ完全体へと近づく工程は、映画のクライマックスのようです。味や食感の想像を膨らませながら、この後の展開に期待が高まります。

栗原氏のアシェットデセールは一皿の構成がしっかりとつくり込まれており、食べ応えがありながらも身構えるような甘さはなく、軽やかで芳醇な味わいが特徴。「お皿の数を絞っているので、ゆったり一皿と向き合いお楽しみいただけたらと思います」と栗原氏。レストランに勤務していた頃は、食事が何品も提供された後のデザートを担っていたため、当時から重くならない食べやすさにこだわっていたといいます。栗原氏の経験と美学が反映されたアシェットデセールは、デザートコースがはじめての方も安心して楽しめるメニューとなっています。

待望の復刻スペシャリテをおみやげに

コースの最後には、小さなグラスデザートと焼き菓子、紅茶を味わいます。紅茶はフランス発の老舗ブランド、マリアージュ フレールが手がけた緑茶ベースのもの。明るい色で香りがよく、柑橘系の清涼感がお菓子にぴったり。世界中で愛されるマリアージュ フレールの紅茶には、冒険や旅を連想させる銘柄が多く、これから歴史を重ねていくçaycaを想い心を動かされたそう。

茶道から幕を開けたコースは、気付けばすっかりフレンチの世界に。お帰りの際、çaycaの最後のおもてなしとして、スイスの伝統菓子「タルト・ヴォードワーズ」をお渡しします。これは、栗原氏が以前勤めていた「レストラン クレッセント」のスペシャリテとして出されていたメニュー。2020年に惜しまれながらも閉店した老舗フレンチのお菓子を、おみやげに持ち帰ることができます。「もう一度食べたい」と復刻を熱望されている珠玉の味を、自宅でも楽しめるOtonamiだけの貴重な機会です。

日本の伝統とフランスの情緒が織りなす、かつてない茶事体験

本体験では特別に、çaycaの通常メニューにはない月ごとに異なるテーマを設けています。春は桜や柑橘、初夏は薫風をイメージするなど四季折々の情景や行事からインスピレーションを得たアシェットデセールが次々と登場。訪れるたびに新たなおいしさ、美しさが待っています。また、月替わりのテーマに合わせて服装やアクセサリーにイメージカラーを取り入れるなど、当日のコーディネートを意識することで、体験とリンクした高揚感を楽しめるでしょう。

日本の「茶」とフランスの「菓」つなぐ、çaycaでの一期一会の体験。「どちらか片方だけではない、çaycaならではの日仏友好スタイルを楽しんでいただけたら嬉しいです」と栗原氏と白井氏はいいます。日本の伝統と優美な西洋の風が交わる唯一無二の空間で、心潤うひとときをお過ごしください。