伝統的なクラシックスタイルの椅子張りを行う工房
練馬区の閑静な住宅街に佇む、1964(昭和39)年創業のI.S.U.house上柳。日本でも数えるほどしかないという、フランス伝統の椅子張りの技術を用いて椅子を制作している工房です。アンティークチェアを大切に所有している方からの修理も受け付けており、末長く椅子を愛用してもらうために丁寧なメンテナンスを行っています。
閑静な住宅街に現れる特徴的な外観のI.S.U.house上柳ここで2代目として活躍しているのが、椅子張り職人の上柳征信氏です。優れた技能を持ち実績を積み重ねた人に贈られる「黄綬褒章」を、創業から60年のあいだに親子2代で受賞。他にも数々の受賞歴があり、その技術が高く評価されています。工房にて様々な椅子の制作や修理を担う上柳氏。「伝統の椅子づくりで使われる材料は天然素材なので、土に置いておくとそのまま自然に還るんです。サステナブルな特徴があるので、今あらためてその魅力が見直されています」と語ります。
フランスやイギリスで椅子張り技術を学び、豊富な知識と確かな技術を持つ上柳氏建築家が最後に行き着く場所ともいわれるのが椅子づくり。直線と曲線を組み合わせてつくる椅子は難易度が高く、デザインのプロともいえる建築家たちの情熱を駆り立てるのだそう。「職人としては、自分がつくった椅子を長く愛用してもらいたい。木製の椅子は、材料として使われた木の年輪の数だけ長持ちするといわれています。この考え方は、実際の使用例からも証明されているんです。その確かな技術を今回の体験で感じ、豊かな時間を過ごしてもらいたいです」と上柳氏。Otonami限定プランを通じて奥深い椅子の世界に触れ、名匠の技を間近で見学できる特別な機会です。
アンティークチェアをはじめ貴重な椅子をショールームで見学
本プランでは、椅子張りに用いるフランスの伝統的な手法のひとつ「ボタン締め」を活用し、オリジナルの小物置きを制作します。制作に入る前に、まずはI.S.U.house上柳のショールームを見学。一歩足を踏み入れると、上柳氏が手がけた大小様々な椅子が並びます。
上柳氏の手による様々な椅子が並ぶショールーム女性向けにデザインされたクラシカルな椅子はどれもかわいらしく、ひときわ人気があるのだそう。例えばフランスから直輸入した生地を使用したマカロンシリーズは、丸みを帯びたフォルムが目を引き、部屋に置くだけでアクセントになります。
最高級の素材を使ったオーダーメイドの椅子も展示ショールームをさらに奥へと進むと、アンティークチェアが並ぶ空間が広がっています。18世紀のフランス・ルイ15世の時代から流行し、花や植物などをモチーフとした優美なロココ調の世界を堪能しましょう。
「ルイ15世が使っていたといわれる椅子もあり、実際に座ることができます」と語る上柳氏「座り比べをしていただくと、その違いを感じてもらえるはず。バネを入れてつくる椅子は年々少なくなってきているので、座り心地もぜひ体感してみてください。中に入れるクッション材によって変わるのもおもしろいと思います」。それぞれの椅子の歴史や特徴など、上柳氏の解説付きで見学し知的好奇心が満たされます。
自分の好きな生地やボタンを選んで小物置きを制作
ショールーム見学の後は、工房へ移動し小物置きを制作します。本プランでは、椅子張りの伝統的な技術「ボタン締め」を体験。ボタン締めとは、ナポレオンの時代から始まった装飾デザインのようなもの。「ボタンを生地に埋め込むことで、凹凸がつくられ陰影が出来上がる。それが生地の柄よりも独特の美しさを醸し出してくれるんです」と上柳氏はいいます。
リングピローにもなる小物置き。ボタン締めの美しさが際立つまずはじめに、用意された3種類の生地(合皮)の中から、好きな生地を選んでいきます。毛足が短く手触りの良い、ふわっとしたモケット生地4種類から選べるオプション(有料)もあります。また、使用するボタンも好きなものをセレクト可能。柄入りも素敵ですが、ボタン締めを施すと無地のほうが映えるともいわれています。
3色(アイボリー、グレー、ブルー)の生地と同じ色のボタンを用いて制作したシンプルな小物置き3種類のシンプルな生地と、オプションで変更できる4種類のモケット生地。どちらもおすすめですが、陰影があり繊細な表情のモケット生地は、色や柄も華やかでロココ調の雰囲気を感じます。生地がやわらかく針を通しやすいというメリットもあるので、自分好みの生地を選んでみましょう。
オプション(有料)で変更できる4種類のモケット生地。エレガントな色や柄に心ときめく名匠と共に伝統的なボタン締めを体験
使用する工具は、ハサミやカッターなど身近なものから、マグネットハンマーやタッカーといった専門的なものまで登場。上柳氏が使い方を丁寧にレクチャーしてくれるので、持つのがはじめてでも安心です。特にホチキスの機能があるタッカーは、使い慣れていないと緊張するのでしっかり説明を聞きましょう。ボタンを通す糸は、強くしなやかな風合いがある麻製を使います。
小物置き制作に使用する工具。麻糸の隣にあるのが生地を固定するために使うタッカー上柳氏のレクチャーを受けながら、オリジナルの小物置き制作をスタート。生地にはあらかじめ針を通す印があるので、それを目安に針を刺し、ボタンを土台に付けていきます。土台のウレタンが固くなかなか針が貫通しないことも。椅子張り用の太くて長い針は、はじめに力を入れるのがコツだそう。
古くから伝承されるボタン締めを体験土台に糸を貫通させてから表面を見ると、ボタンが埋め込まれているのがわかります。糸をぎゅっと引っ張り、ボタンを深く押し込み、裏面の糸をタッカーで固定する。この工程を繰り返します。埋め込む深度によって仕上がりが異なるそう。つくった人の個性が表現されるのが、ボタン締めの魅力といえるでしょう。
上柳氏の手本通り、ヒダをつくるように生地を折りながら形をととのえていく4ヶ所にボタン締めを施したら、生地を折りたたんでタッカーで留めます。きれいなヒダをつくるためには、余った生地をハサミで切り落とすのがポイント。最後に飾り鋲をハンマーで打って取り付け、完成です。
飾り鋲は先の細いハンマーを用いて打ち付けていく専門的な工具を使うのは緊張しますが、上柳氏のサポートがあるので安心して進められます。ボタン締めによる凹凸感は一つひとつ個性が出るもの。自分の手でつくった作品が完成する瞬間は、達成感と共に喜びもひとしおです。
小物置きづくりを通して椅子の見方が変わる
「椅子張りという仕事は世の中に知られていない。だからこそ、体験を通して認知度を上げていきたい」と語る上柳氏。1枚の生地だけでボタン締めという装飾が完成することに気付いたり、はじめて見る工具を使ったりすることで、体験後には椅子の見方が変わるそう。「飾り鋲を触ったことがない人は多いので、体験後に出会うと思わず見てしまうのだそうです」。こうして椅子への興味を少しでも高めてもらえたらと上柳氏はいいます。
小物置き制作を通して伝統的な椅子づくりの世界に触れる名匠に学ぶ、椅子張り技術を用いた小物置き制作。300年以上もの長い歴史を持つ椅子づくりの世界に触れる、Otonami限定プランです。完成した自分だけの作品は、使い続けると愛着が増していくでしょう。アンティークチェアに囲まれた工房にて、伝統のものづくりを楽しんでみませんか。