フランス伝統の椅子張りの技術を継承する“椅子の家”
東京都練馬区の平和台駅から歩くこと5分、閑静な住宅街に建つ「I.S.U.house上柳」。椅子のフレームが飾られた外観が目を引くこの場所は、フランス伝統の椅子張りの技術を用いて椅子を制作している日本で数少ない工房です。創業から60年以上の月日のあいだに、親子2代で黄綬褒章を受賞。他にも数々の受賞歴を持ち、その技術が高く評価されています。
その名や佇まいから椅子への愛を感じられる創業者である先代から工房を受け継ぐのは、2代目の上柳征信氏。椅子張りの技術を磨き続ける傍ら、地元練馬区の伝統工芸会に所属、多摩美術大学で指導を行うなど、椅子張りの価値や魅力を届けるべく活動の場を広げています。
2代目・上柳征信氏。気さくな人柄で、その場の空気を軽やかにしてくれるフランス・パリを中心に、ヨーロッパ各地でアンティークチェアに触れてきた上柳氏が信条とするのは、“アンティークチェア一筋”。その魅力の真髄を、熱い想いと共に直々に教わることのできる貴重な機会です。
華やかさと耐久性が両立する中世のクラシックスタイル
はじめにショールームの見学から。ここには、フランスの伝統的な椅子張りが施された数多くのアンティークチェアが所狭しと並んでいます。作り手の美意識に感動せざるを得ないフレームの装飾や、心躍るカラフルな生地など、表情豊かなアンティークチェアたち。なかには、ルイ15世の時代の椅子をリペアしたものも。ショールームにひとたび足を踏み入れると、そこはまるで中世のフランスの世界です。
言葉にできないオーラをまとったアンティークチェアが出迎える上柳氏のアンティークチェアのコレクションや、I.S.U.house上柳で受け継がれている椅子張りの技術は、「クラシックスタイル」という主にフランスのロココ時代のもの。椅子張りの技術が最も花開いた時期のこの技術は、100年使える耐久性を誇ります。格段に丈夫な椅子が完成する理由のひとつは、椅子張りの材料に天然素材のみを使用すること。ヤシの葉や馬毛などフランスの技法通りの材料で施す椅子張りは、使い込むほどに自分の体になじみ、“椅子を育てる”ことができるのだと上柳氏は話します。
椅子張りの技術を用いたオリジナル商品の開発にも力を入れているOtonami限定の本プランでは、上柳氏の手ほどきを受けながら、歴史ある椅子張りの技術をそのまま用いてピンクッションを制作。実際に手を動かして椅子張りの技術を体感することで、アンティークチェアの魅力に気づかされるでしょう。
椅子張りの技術をそのまま活かしたピンクッション作り
ショールームの見学後は、いよいよピンクッションの制作へ。長年使い込まれた様々な道具や生地のサンプル、試作品に取り囲まれ、ものづくりの空気が満ちる地下の工房で、上柳氏からレクチャーを受けます。使用する道具はハサミや金槌など、いたってシンプルです。
お好みの生地を選び、ピンクッション作りに挑戦(画像はイメージです。柄の入った生地はオプション(有料)の輸入生地となります)制作するのは手のひらサイズのピンクッションですが、その工程や材料は、椅子張りと同じ。椅子張り職人と同じ作業を体感できるのです。また、使用する生地は、色とりどりの国産の生地(無地)のほか、オプション(有料)でフランス製の生地からセレクトすることも可能です。
※オプション(有料)の生地は、当日ご用意する数種類の柄からお選びいただきます。掲載画像と同じ柄がない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
ロマンティックな柄に目を奪われるフランス製の生地(画像はイメージです)椅子の耐久性を維持する秘密は天然素材
まず、ピンクッションの下部となる板に、糸を十字に釘で打ち付けます。そしてクロスさせた糸と板の間に、ヤシの葉の繊維を入れていきます。繊維はロープ状にまとまっているので、手でほぐしてふわふわの状態で板と糸の空間を均等に詰めます。
天然素材とふれあう時間に心が解きほぐされるよう糸の上に繊維をもうひと山のせたら、選んだ生地をかぶせます。この作業はまさに椅子張りの布を張っていく工程。ここで生地がズレないよう、まっすぐ張らせることが重要です。100年使い続けられる椅子は、この張りの工程が生地の繊維に沿ってできていることで、耐久性が維持されているのだそう。
鋲を打ち込む作業では上柳氏がしっかり支えてくれるので安心仮止めで布を張らせたら、板のフチに鋲を打ち込んでいきます。使用するのは、金槌を使い慣れていなくても安心な飾り鋲。リズミカルに鋲を打つ作業にだんだんと夢中になり、慣れた頃には自分だけの小さなピンクッションの完成です。
作る者の情熱と使う者の愛着、両方から見つめる伝統の技
アンティークチェアの歴史を学び、伝統的な椅子張りと同じ技術で行うものづくり。そうして完成した手作りのピンクッションを手に取れば、感慨もひとしお。ころんと丸みを帯びた姿に愛おしさが湧き上がります。アンティークチェアの魅力を「椅子は場所をとるけれど、だからこそ誰かの居場所になってくれるもの」と上柳氏は話します。
椅子張りと同じ技術で制作したピンクッション。丈夫で長く愛用できる椅子への大きな愛情が注がれたクラシックスタイルの技法を宿し、自分の手で作り上げたピンクッション。作る者の情熱と使う者の愛着、その両方を強く実感させてくれるアイテムは、長く手元に置いておきたい一品となることでしょう。大切に受け継がれる伝統のものづくりを、I.S.U.house上柳でじっくり体感してみてください。