民藝運動家・河井寬次郎氏の意匠を受け継ぐ河井工房
京焼清水焼の発祥地、京都市東山区にある五条坂周辺の住宅街に佇む「河井工房」。民藝運動を牽引した陶芸家・河井寬次郎氏が生み出した、民藝が持つぬくもりと実用性を両立した独自の「京焼民窯(みんよう)」の作風を受け継ぐ工房です。寬次郎の甥で初代・河井武一氏は、40年近くにわたり寛次郎のもとに弟子入りしたのち、1976(昭和51)年に独立。寛次郎の意匠や技法の数々はさらに磨き高められ、3代目で本体験の講師である河井亮輝(あきてる)氏へと受け継がれています。
真剣な眼差しで作陶する河井工房の3代目 河井亮輝氏京焼民窯は、いわゆる民藝と呼ばれる茶器や酒器、食器、花器など、日常的な実用品と装飾品の両面を両立した独自の作風で、機能性と美しさを兼ね備えています。亮輝氏はその作風を踏襲しながらも、現代的なエッセンスを取り入れた作陶で注目を浴びています。
河井氏の作品は料亭とはじめとした料理店で実際に使われるほか、全国各地から展示依頼がある亮輝氏の作品は自然素材を使った釉薬や土の質感を生かし、日常生活に溶け込むあたたかな色彩とぽってりとした形状が特徴。百貨店の展覧会や個展、ワークショップを通してその魅力は広まり、国内外で高い評価を得ています。
暮らしにしっくりなじむ「日用品の美しさ」に気がつく
体験の始まりは、河井工房の客間にて。初代・武一氏、2代目・透氏、そして3代目・亮輝氏の作品たちが並び、それぞれの特徴を亮輝氏の解説付きで間近で鑑賞できる貴重な機会です。また、京焼民窯や京焼・清水焼について、3代目ならではの視点でお話を聞くことができます。
たくさんの作品たちが迎える河井工房の客間京焼・清水焼とは、京都の特に清水周辺の窯元を中心に発展してきた陶磁器のこと。手作業による自由な創作性を重んじ、窯元ごとに独自の技術やデザインが受け継がれています。その中で、かつて価値が低いとされた生活用品類は、日本を代表する思想家・柳宗悦(むねよし)を中心に、河井寬次郎や濱田庄司などの民藝運動家たちによって「用の美」という新たな価値を見出され、新しい美の基準として確立されたのだといいます。
歴代の当主により制作された作品の数々がずらりと並ぶ解説に耳を傾けながら、亮輝氏の作品でお抹茶と京菓子を愉しみます。実際に作品を使ってお茶菓子をいただくと、使い込むほどになじむであろうことがイメージでき、暮らしの中に根付く日用品の美しさに気づかされるようです。この後の制作に向けて、どのような作品に挑戦しようか思いを巡らせるのも良いでしょう。
実際に使ってみてわかる、河井工房の器ならではの魅力(画像はイメージです。お茶をお召し上がりいただく際のお席は畳敷きで、床にお座りいただきます)自由な発想で自分だけの作品づくり
作品に触れ、京焼・清水焼について学んだら、いよいよ工房へと移動してろくろでの制作を体験。湯呑み、小皿、茶碗から2つを手がけます。Otonami限定で、通常河井工房で行っている制作体験では選ぶことができない小鉢、中鉢、中皿、マグカップ、お猪口、ミニ花器などからのセレクトも可能です(※)。
※セレクトできる内容は、作陶経歴やろくろの経験有無などにより変わります。詳しくは体験当日、体験主催者とご相談ください。
他のことを忘れ、指先一点に集中する一般的な京焼・清水焼は薄くつくり上げることが多いなか、少し厚めに成形するのが河井工房の特徴。亮輝氏のアドバイスのもと、民藝のぬくもりをぽってりとしたフォルムで表現するように意識しながら手を動かしてみましょう。力の入れ具合、指を抜くタイミングなど、亮輝氏がそばについて細やかに指導してくれるため、ろくろがはじめてでも安心して取り組めます。ろくろで理想の形に近づけるためには、土から手を離す最後の瞬間までゆっくりと動かすことがコツなのだそう。
成形し、釉薬、焼成を経た作品のイメージ(体験当日に制作する作品とは仕上がりが異なる場合があります)「これまで、祖父や父から型にはめられることは決してありませんでした。私自身も作品に対してこうでなければならないという思いがなく、その時々に感じ取るものを大切にしています」と、ろくろと向き合いながら語る亮輝氏。体験でもつくり手の感性に任せ、自由に制作を楽しんでもらいたいとのこと。職人になったつもりでイメージを膨らませ、自分だけの京焼・清水焼を表現しましょう。
職人と共にお茶のひとときを愉しむ
作品が出来上がったら、お番茶をいただきながら歓談のひとときを愉しみましょう。制作を通じて感じたことをゲスト同士で共有したり、釉薬や焼成の技術、作品をつくる上で意識していることなどを亮輝氏に尋ねたりと、陶芸の世界をさらに深掘りしてみてはいかがでしょうか。
成形のあとに続く工程についても丁寧に教えてもらえるので、ますます完成が楽しみに陶芸作品に囲まれて育ち、工房でつくった陶器を普段の食器として使って暮らしてきたという亮輝氏。「幼い頃からそばにあるのが当たり前だったからこそ、良い意味でこだわりがないのでしょうね」と話します。子ども時代のエピソードや陶芸家としての暮らしについてのお話も興味深く、和やかなひとときはあっという間に過ぎてゆきます。
愛おしい日々に寄り添う「用の美」を手がける幸せ
本体験で制作した作品は亮輝氏が仕上げ、釉薬(上薬をかける工程)を施し、焼成したのち、郵送でお届け(※)。河井工房の特徴のひとつである、厚めにのせられた釉薬で自身の作品がどのような表情を見せるのか、再会の瞬間を楽しみに待ちましょう。体験当日はOtonami限定で、亮輝氏が制作した湯呑みからお好きなひとつを選んで持ち帰れます。
※作品の発送まで、最長約6ヶ月ほどお時間をいただきます。
河井工房らしいあたたかみある釉薬が魅力の湯呑み河井寬次郎は、「暮しが仕事 仕事が暮し」という言葉を大切にしていたといいます。当たり前の日々を生きることの美しさや、それを支える日用品を慈しむこと。あたたかな思いが作風とともに受け継がれている河井工房で、いつもの暮らしがより愛おしく感じられる自分だけの作品づくりに没頭してみませんか。