約70年間大正琴を作り続ける「ナルダン楽器」の工房へ
「大正琴」という楽器をご存じでしょうか。大正時代に名古屋・大須で生まれた琴で、タイプライターのようなボタンが付いているのが特徴です。この音階ボタンを片手で押さえて音の高さを変えながら、弦を弾きます。演奏方法はピアノのようでありながら、奏でる音は弦楽器に近い、とてもユニークな楽器です。
大正琴のイラストがあしらわれた暖簾が目印大正琴を70年以上にわたって作り続けているのが、ナルダン楽器です。戦後間もなく創業し、現在は3代目が継承。工房を併設したアトリエでは大正琴教室を開催しています。
大正琴とギター並ぶ、広々としたアトリエ本体験の講師を務めるのは、ナルダン楽器の3代目社長夫人・岩田千秋氏。大正琴の講師として20年以上にわたって活動しています。「大正琴の魅力を多くの人に広く伝えたい」と、大正琴教室「大正琴澄音会」の運営や、イベントの企画など、多方面で活躍。また、アトリエではアンティークの銘仙羽織とオリジナル袴の衣裳レンタルも行い、大正琴と同時代に多くの人々に愛用されていた着物の魅力を伝える活動にも力を注いでいます。
講師の岩田千秋氏は、自ら大正時代の着物に身を包んで出迎えてくれる。着付けの腕も見事大正時代に思いを馳せながら、着物を選んで袖を通す楽しみ
まずは、袴と羽織の着付けから。ずらりと並ぶ着物と袴、そしてブラウス(オプション)の中から、心惹かれるものを選びます。ナルダン楽器で着られるのは、銘仙という着物。大正時代から昭和時代初期にかけて作られ、当時の女性の普段着として愛されていたものです。
羽織は約30種類、浴衣が約15種類、袴は4色用意。ブラウスは持参またはオプションで追加できる銘仙は、レトロなのにどこかモダンな雰囲気も漂うのが魅力的。幾何学模様のように、和服ではなかなか目にすることのない華やかで個性的な色柄も多数揃います。大正時代にタイムスリップしたような気分で、お好みでセレクトでき、夏には浴衣が登場します。
オプションで銘仙を着付けてもらうと、王道の“はいからさん”スタイルが完成さらに深く大正ロマンの気分に浸りたい方は、オプション(有料)にて銘仙の着付けも可能です。通常はブラウスの上から銘仙を羽織るところ、きちんと着付けてもらって袴を履くことができます。
アトリエと工房を見学し、大正琴の世界へ足を踏み入れる
着付けが終わったら、岩田氏の案内でアトリエを見学します。アトリエ内に展示されている個性豊かな大正琴の紹介を聞いたり、工房を見学して大正琴の成り立ちや音が鳴る仕組みを教わったり……。この地で生まれ、今なお愛される大正琴の魅力を知ることができます。
普段は目にすることのない、制作途中の大正琴も見せてもらえる工房では、ナルダン楽器の3代目であり、職人でもある岩田茂氏が大正琴を作る様子も見学できます。たくさんのパーツを組み合わせて一つひとつ丁寧に仕上げていくさまを見ると、大正琴の新たな魅力を感じ取ることができるでしょう。
大正琴の制作の様子を間近で見られる貴重な機会軽快な指使いを習得し、和洋折衷の音色を奏でる
オプション(有料)で、岩田千秋氏から大正琴のレッスンを受けることもできます。まずは、大正琴の基本的な演奏方法を学ぶところから。右手にピックを持ち、左手でボタンを押して、音階を調整します。
楽譜の読み方を習い、「きらきら星」を演奏する指の位置や対応する音さえ理解できてしまえば、難しい動作や指使いはほとんどありません。楽譜は数字で書かれているので、楽器の演奏が得意でない人や、楽譜を読むのが苦手な方でもご安心を。10分ほど練習すれば綺麗に音を鳴らせるようになり、30分もさわれば1曲演奏できるようになります。
街中に繰り出し、袴姿での散策と撮影を楽しむ
着付けてもらった着物と袴は、体験終了後もレンタル可能。ナルダン楽器の周辺には、名古屋城や四間道(しけみち)、円頓寺商店街など、趣ある観光地が点在。地下鉄に約15分乗れば、大正琴発祥の地である大須にも行くことができます。ナルダン楽器のすぐ近くにレンタサイクルもあるので、袴姿で自転車に乗っての街中散策もおすすめです。
ナルダン楽器から歩いて約10分の四間道にある古い街並みは、着物が映えるスポット名古屋は昔から「ものづくりの街」と呼ばれています。ユニークなアイデアが優れた技術力によって形になり、人々に愛されてきた歴史があります。なかでも西区は、名古屋友禅や名古屋扇子など伝統的なものづくりが盛んな地域。ナルダン楽器が手がける大正琴からも、その息吹を感じられます。
大正琴の澄んだ音色を多くの人に届けるため、制作に打ち込む岩田茂氏大正時代の着物に身を包んでの街中散策では、洋服で行くときとは違った新たな発見があるはずです。大正琴のアトリエ見学や演奏も、大正琴が生まれた当時の感動すらも感じられる貴重な体験となるでしょう。大正ロマンの気分を満喫しながら、名古屋の街でゆったりと1日を過ごしてみませんか。