朝一番、禅僧の作法に習う修行体験
東京・芝公園にある曹洞宗の事務局「曹洞宗宗務庁」が本体験の会場です。周辺は古くからのオフィス街ですが、朝一番は人が少なく静か。清々しい空気が1日の始まりを後押ししてくれそうです。
都心にあるとは思えないほど穏やかな空気に満ちている「禅の教えをわかりやすく伝えたい」との想いから、曹洞宗宗務庁では坐禅会をはじめとする様々な活動を行っています。禅とは、物事の真実の姿やあり方を見極め、これに正しく対応していく心のはたらきを調えること。教えの根幹は坐禅にあり、坐ることで身体を安定させ、心を調えることで身・息・心の調和をはかります。
優しい笑顔で体験者を出迎える禅僧・宇野全智氏(指導する禅僧は体験日により異なります)禅の世界へ誘うのは、禅僧の宇野全智(うのぜんち)氏をはじめとする禅僧(指導する禅僧は体験日により異なります)。宇野氏は、曹洞宗総合研究センターの常任研究員として、坐禅会や講演会、写経会などを通してわかりやすく禅の教えを伝えています。まとう空気は穏やかで清々しく、その素敵な笑顔に思わず引き込まれます。
法話と坐禅を通して日常から離れる体験を
はじめに法話を拝聴します。禅の教えを初心者にもわかりやすく伝えるお話は、身近な話題、暦や年中行事など、日によってトピックはさまざま。日頃意識していなかった自分を取り巻く豊かな世界、気づきと学びのあるお話は目から鱗です。
わかりやすい手ほどきのもと、初心者でも安心して坐禅に臨める続いて禅の基本となる坐禅を体験。坐禅の作法や心構えについて教わり、いよいよ実践。丸く厚みのある坐禅用の坐蒲(ざふ)に坐って姿勢を整えます。お腹から息を長く吐くことを意識し、ゆっくりと呼吸を整えます。坐禅をする時は、露天風呂に入った時のような、リラックスしてのんびりしているイメージを持つとよいのだとか。はじめてだと少し緊張してしまうかもしれませんが、力まずに取り組んでみましょう。
希望すれば警策(きょうさく)で肩を叩いてもらうことができる坐禅の時間は数分間の短い時間ですが、ゆっくりと心がほどけていくのを感じられます。日常生活では得られないゆったりとした時の流れの中で、思わぬ気づきがあるかもしれません。坐禅が終わった後は、感じたことを共有したり、気になったことやわからないことを尋ねてみたり、会話を楽しみます。慌ただしく過ぎてしまいがちな朝の時間。体験での学びをきっかけに毎日数分でも坐禅を取り入れれば、また違った一日を迎えられるでしょう。
「五観の偈」を学び、朝粥をいただく
曹洞宗では、食事をすることも大切な修行のひとつ。800年前、道元禅師は食事をいただく作法と意義を示した『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』を著しました。禅僧のテーブルマナー指南書といえるこの書には「五観の偈(ごかんのげ)」という5つの心得が記され、今も修行道場では僧たちが毎食前に唱えています。
朝粥と季節の食材でつくられた精進料理修行道場では本来、朝粥・胡麻塩・漬物だけですが、本プランでは季節の食材を使った精進おかず3品が付きます。春夏秋冬、日本の大地の恵みに感謝をしながらいただきましょう。坐禅の後の食事は感覚が研ぎ澄まされ、お米の甘みや食材の旨みが心と身体に染み込みます。
粥を額のそばまで持ち上げてから、匙を縦にしていただく食事は禅僧の作法に則っていただきます。食後には、お粥が入っていた茶碗にお湯を注ぎ、一つ残しておいたたくあんで糊を取って飲み干します。食材の命そのもののありがたさと尊さをしっかり受け止め、「ごちそうさま」と唱えましょう。
食後の合掌を合図として、お粥の器にお湯が注がれる書く修行「写経」を通して心と身体をととのえる
最後は写経体験です。漢文で書かれた「五観の偈」をお手本に、間違えないよう一字一字集中して書き写します。紙とペンで文字を書くことが非日常になっている方も多いかもしれません。写経を終えると、心地よい疲労感と達成感に包まれます。
五観の偈の意味も参考にしながら、一字一字を大切に書き写す写経して出来上がったものは、思い出として持ち帰ることができます。本体験で得た気づきを日常に活かし、教えを実践するためのお守りともなってくれることでしょう。目まぐるしい日々の中で折に触れて見返し、穏やかな心を取り戻すきっかけにしてみてください。
写経は筆ペンで行うので、筆に慣れていなくてもきれいに書き写せる道端に咲く一輪の花に足を止める体験を
「日常生活は忙しく、速さや効率が求められます。まるで飛行機で移動しているようなものですが、飛行機に乗っている時、道端に咲く一輪の花には気づけません。坐禅は、その一輪の花に気づき、足を止め、その美しさを感じる体験なのです」。宇野氏は坐禅をする意味について、そう語ります。朝の静謐な空気の中で、禅に親しむひととき。坐禅と朝食、写経を通して、一人ひとりの心に咲く一輪の花を見つけてみてはいかがでしょうか。
朝修行の体験を通して、禅の世界を身近に感じられる