穏やかな静寂に満ちた約100畳の研修道場
夜の帳が下りる頃の東京・芝公園。東京グランドホテル内にある、全国約14,000の曹洞宗寺院を包括する本部「曹洞宗宗務庁」が本体験の会場です。圧倒されるほど広々とした大広間は約100畳もあり、仏壇には御本尊のお釈迦さまが祀られています。
一歩足を踏み入れると、その静寂と厳粛な空気に包み込まれるよう「禅の教えをわかりやすく伝えたい」との想いから、曹洞宗宗務庁では坐禅会をはじめとする様々な活動を行っています。禅とは、物事の真実の姿やあり方を見極め、これに正しく対応していく心のはたらきをととのえること。教えの根幹は坐禅にあり、坐ることで身体を安定させることで身・息・心の調和をはかります。
優しい笑顔でゲストを出迎える禅僧の宇野全智氏本プランにて禅の世界へ誘うのは、禅僧の宇野全智(うのぜんち)氏。宇野氏は、曹洞宗総合研究センターの常任研究員として、坐禅会や講演会、写経会などを通してわかりやすく禅の教えを伝えています。
修行道場の夕食「薬石」を味わう
曹洞宗において、食事をすることは大切な修行のひとつ。日本に曹洞宗の教えを伝えた道元禅師は、およそ800年前に食事の作法と意義を示した「赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)」を著しました。禅僧のテーブルマナー指南書ともいえるこの書には「五観の偈(ごかんのげ)」という5つの心得が記され、今も修行道場では僧たちが毎食前に唱えています。
春夏秋冬、日本の大地の恵みに感謝をしながらいただく(写真はイメージです)本プランでははじめに、禅僧の夕食「薬石」をいただきます。戒律として修行中は正午以降の食事が許されていませんでしたが、僧の飢えを癒し修行に励むための良薬として食事を摂っていたことや、あたためた石をお腹に当てることで空腹を紛らわしていたことに由来し、夕食が「薬石」と呼ばれるようになったそう。その名前に秘められたエピソードを聞くと、ますます禅の世界への興味をかき立てられます。
この日の薬石は香り豊かな茗荷の炊き込みご飯、味噌汁、漬物と冬瓜の煮物日常でなかなか味わう機会のない精進料理は、素材の繊細な味を感じられます。朝食・昼食と違って、薬石は修行道場の正式な食事ではないため、読経などの細かな作法は特に決められていないそう。でも、修行道場での食事の心構えを大切に感じながら、丁寧にいただきましょう。
いす坐禅で心身をととのえる
続いて「禅の道そのもの」と説かれる坐禅の時間です。夜に行われる本体験は、蝋燭の灯りのもと自分の心身と向き合うOtonami限定プラン。静寂の中で現代の生活スタイルに寄り添った「いす坐禅」を行います。曹洞宗では、姿勢をととのえること(調身)は、そのまま心がととのう(調心)ことにつながるのだそう。1日の終わりを締めくくる穏やかなひとときです。
椅子に座り背筋をすっと伸ばし、深い呼吸を心がけると坐禅の質が高まるいす坐禅では、坐禅がはじめての方や足腰に不安がある方でも、本格的な坐禅と同じ世界を味わうことができます。行住坐臥(ぎょうじゅうざが)という「歩く・立ち止まる・座る・寝る」の日常の動作のすべてが修行であると考える曹洞宗。椅子さえあればオフィスや旅先を「道場」に変え、坐禅で心をととのえることができます。
忙しい現代人にとって場所を選ばず心をリセットできるいす坐禅全3回の連続講座で理解を深める禅の世界
本プランは月1回開催、全3回の連続講座。坐禅後の座学では、3ヶ月を一期とするテーマを設け禅の教えを深掘りします。例えば「禅と食」を学ぶ回では、道元禅師の教えに基づき、修行としての調理から「いただきます」の真意までを紐解きます。日々の食事から自分をととのえる智慧を学びましょう。
まずは禅僧が食事の前に唱えるという5つの心得「五観の偈」から学ぶお釈迦さまの遺言「仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)」を読み解く回では、「涅槃図」から入滅の瞬間を経て、釈尊最後の教えを現代の道しるべとして探求。仏弟子らしく今を生きるための具体的な心構えを学び、日常に活かしましょう。
3ヶ月の連続講座を通して禅の世界を深掘りする曹洞宗の教義の核心「修証義(しゅしょうぎ)」に向き合う回では、迷い多き人生の教科書として、仏の心で本来の自分を見つめ直します。より本格的に禅の世界への理解を深めるため、継続的に学ぶことがおすすめです。
※全3回を一期とした内容ですが、1回から都度予約も可能です。
道端に咲く一輪の花に足を止める体験を
「日常生活は忙しく、速さや効率が求められます。まるで飛行機で移動しているようなものですが、飛行機に乗っている時、道端に咲く一輪の花には気づけません。坐禅は、その一輪の花に気づき、足を止め、その美しさを感じる体験なのです」。宇野氏は坐禅をする意味について、そう語ります。
夜の体験ならではの静寂の中で、自分の心を見つめるひととき夜のしじまに、「今、この瞬間」を生きるための禅に親しむひととき。坐禅と薬石、座学を通して、一人ひとりの心に咲く一輪の花を見つけてみてはいかがでしょうか。