【終了しました】京都「梅小路醗酵所」で学ぶ黒麹づくり −甘酒飲み比べと季節の醗酵デザート付き−

「麹」がつなぐ醗酵文化の今と昔

2020年に梅小路公園沿いにオープンした宿泊施設「梅小路ポテル京都」。提灯が吊るされた懐かしさ漂う横丁の一角にある「梅小路醗酵所」は、先人たちから受け継がれてきた麹や醗酵の恩恵を現代の私たちが未来へとつなぐことを目指しています。酒造りの世界には「一麹、二酛（もと）、三造り」という言葉があり、麹づくりは最も大切な工程。その体験ができる貴重な場所です。

梅小路醗酵所には、日本初ではないかというガラス張りの麹室（こうじむろ）があり、外から自由に見学ができます。麹菌を米に付けて醗酵させる作業を行う麹室は、歴史的に女人禁制で、限られた杜氏のみが入れる神聖な場所。酒の神が宿っているとも考えられ、他の菌が入り込まないよう厳重に管理されてきました。立ち入りが難しい麹づくりの場を多くの人に見てほしいと作られた現代の麹室。本体験では特別に、その麹室で黒麹づくりに挑戦します。

日本の醗酵文化の原点「麹」を知る

本体験は、「麹とは何か」という素朴な疑問を座学で紐解くところからスタート。醤油や味噌、お酒など、私たちの暮らしに欠かせない食品には麹の力が活用されています。日本の伝統的な食文化の根源ともいえる麹づくりは、様々な工程があり、手間と時間がかかるもの。その製造過程や醗酵の歴史などを、専門の知識を習得した麹師から学びます。近年は、醗酵食品の健康や美容へのはたらきについて研究が進み、日本の麹は海外からも注目されています。

本体験で手がける黒麹は、かつてすべての焼酎に使われていたともいわれる代表的な麹です。クエン酸を多く含むため、麹を使った食材としてなじみ深い甘酒も、黒麹で作るとすっきりとした味わいに。美容や疲労回復に高い効果が期待できる黒麹は、現代を生きる私たちの生活にぜひ取り入れたい麹のひとつです。

神聖な麹室で麹づくりの醍醐味「種切り」を体験

麹の歴史や醗酵文化について学んだ後は、いよいよ実際の黒麹づくり。まずはせいろの中で蒸しあがるお米をチェック。蒸し具合によって麹の仕上がりが左右されるといわれる大事な時間です。芯が残らない程度に固めで、ひねり餅ができるくらいがベストの蒸し上がり。親指と人差し指でひと粒をつまみ、きれいに伸びるか確かめます。せいろ全体の米が同じ状態になるよう、くまなく触れて見定めます。

お米がうまく蒸しあがったら、いよいよ麹室の中へ。蒸し米に「種麹」と呼ばれる麹菌を混ぜる作業を行います。これは、麹作りにおいてもっとも大切とされる「種切り」という工程。麹菌が発育しやすい室内環境にするため、温度は約30度、湿度は約60％に維持されています。

麹菌は熱さに弱いため、蒸し米を広げて40度前後に保ちながら作業を行います。高温多湿の麹室の中で暑さとの闘いとなりますが、黒麹を振った蒸し米をやさしくほぐしながら、細かい粒子の麹菌をひと粒ひと粒に付着させていきます。麹菌の成長は季節や天候ごとに微妙に変わります。

その後3日間、醗酵所のスタッフが温度や湿度の管理をしながら、黒麹が成長するのを見守ってくださるそう。「手入れ」という言葉が表す通り、麹にとって快適な温度を保ち続けながら世話をしていく過程は、赤ちゃんを育てるような感覚に例えられます。温度や湿度が低めの冬には湯たんぽや電気毛布を使うことも。

黒麹は菌の色が黒っぽいため、仕込みの際に木造の蔵がどうしても汚れてしまいます。そのため、仕込みのあとは目に見えない黒麹を徹底的に拭き上げ、温度や湿度の管理に使用する布も念入りに洗濯しているそう。こうした手間隙をかけて、おいしい黒麹が育てられています。手がけた黒麹が無事成長し、1週間ほどで自宅に届くのを楽しみに待ちましょう。

醗酵所ならではの麹の味比べと醗酵スイーツを堪能

麹づくりの作業が終わったあとは、がんばった身体をいたわる季節の醗酵デザートをいただきます。その前に、梅小路醗酵所が育てた麹で作った甘酒を4種類飲み比べて、それぞれの個性を体感。

スタンダードな黄麹甘酒に加え、本体験で扱う黒麹、そして残りの2種は玄米甘酒や麦甘酒、純米吟醸の酒米で作った甘酒など、個性的で珍しい甘酒を日替わりで提供します。同じ麹でも、使う穀物や麹菌によって香りも味わいも異なることがわかるはずです。気に入った甘酒があれば、体験後に麹を購入することも可能です。

醗酵デザートは季節ごとに内容が変わり、5〜10月は「氷甘酒（〆酒付き）」、11〜4月は「甘酒ぜんざい」。先ほど体験した麹づくりを振り返りながらいただくと、いっそう味わい深く感じられます。

醗酵文化を日常の中に取り入れて

おみやげには、梅小路醗酵所特製のバスグッズ「こうじ湯の素」をプレゼント。日本酒をつくる杜氏の手の美しさに着目し、食用と同じ工程で育てた麹をナチュラルなバスグッズに仕立てました。麹のもつパワーをお肌からも体感できそうです。

お買い物も体験後の楽しみのひとつ。店内には約160種類の国産のお酒や様々な醗酵食品が並び、気に入ったものはその場で購入することも可能です。

黒麹は出来上がりに3日間かかるため、2日目、3日目とスタッフがお世話をします。そうして出麹（でこうじ）した麹を、活用法が書かれたレシピとともに生麹のまま後日発送。ご自身の手で種切りをしたからこそ、愛着もひとしおです。

生麹は通常の店頭では販売していない、麹作りを体験したゲストだけの特別な麹です。乾燥麹とは違い菌が失活せず、麹菌が生きたままなので香りや風味が良く、発酵パワーも強いといわれています。濃厚で深い味わいの中に酸味のアクセントが効いた黒麹は、料理にコクを加えたい時におすすめ。甘酒や味噌との相性もばっちりです。どんなお料理とマッチするのか、自由に試してみてください。

日本の醗酵文化を五感で感じられる梅小路醗酵所。貴重な麹づくりを通して醗酵文化に触れ、麹という新たな彩りを日々の暮らしに加えてみてはいかがでしょうか。