【終了しました】京都「梅小路醗酵所」できたて生麹で4種のオリジナル塩麹作り

「麹」がつなぐ醗酵文化の今と昔

2020年に梅小路公園沿いにオープンした宿泊施設「梅小路ポテル京都」。提灯が吊るされた懐かしさ漂う横丁の一角にある「梅小路醗酵所」は、先人たちから受け継がれてきた麹や醗酵の恩恵を現代の私たちが未来へとつなぐことを目指しています。酒造りの世界には「一麹、二酛（もと）、三造り」という言葉があり、麹づくりは最も大切な工程。その体験ができる貴重な場所です。

梅小路醗酵所には、日本初ではないかというガラス張りの麹室（こうじむろ）があり、外から自由に見学ができます。麹菌を米に付けて3日間醗酵させる麹室は、歴史的に女人禁制で、限られた杜氏のみが入れる神聖な場所。立ち入りが難しい麹づくりの場を多くの人に見てほしいと作られた現代の麹室です。本体験では特別に、出来たての麹に触れる「出麹」を体験し、その麹にお好みのスパイスや食材を加えてオリジナルの塩麹を作ります。

神聖な麹作りの最終章「出麹」を体験

本体験は、自家製の塩麹を試食するところからスタート。醤油や味噌、お酒など、私たちの暮らしに欠かせない食品には麹の力が活用されています。日本の伝統的な食文化の根源ともいえる麹づくりは、様々な工程があり、手間と時間がかかるもの。今回はその中でも使いやすい万能調味料「塩麹」のアレンジレシピと使い方について、麹師がレクチャーします。近年は、醗酵食品の健康や美容へのはたらきについて研究が進み、日本の麹は海外からも注目されています。

塩麹の使い方を知った後は、いよいよ麹室に入って出麹の作業を体験します。約3日間の日数をかけて製造される麹。初日にはただの米粒だったものが、3日目にはふわふわと菌糸が伸び、ようやく麹として完成します。麹菌が繁殖した麹をほぐして冷ましていく出麹は、麹作りにおける最終工程。醗酵を肌で感じられる唯一の瞬間といえます。

麹菌が繁殖した麹を丁寧にほぐして冷ます

出麹体験では、ふわふわとした麹の菌糸を見ることができます。目を凝らして観察してみると、まるでお米に小さな白い花が咲いているよう。出来たての生麹はその場で試食可能。山形県産の特別栽培減農薬米を100％使用した麹は、食感は柔らかく、ポン菓子のようなお米のやさしい甘みが口の中に広がります。本来ならば杜氏しか知りえない、生麹の香りと味わいを体験できるのも醗酵所ならではの貴重な体験です。

出麹の作業では、ひとかたまりになった麹をパラパラになるまでほぐします。麹は自熱で40度近い温度になっており、手でほぐしながら生麹ならではのあたたかみを感じることができます。その後、冷却し、乾燥させる「枯らし」の作業を経て、店頭で販売される乾燥麹となるのです。

お好みのフレーバーを選んでオリジナルの塩麹作り

出麹の作業が終わったら、出来たての生麹を使った塩麹作りを行います。塩と水だけを加えたスタンダードな塩麹に加えて、お好みのスパイスや食材を組み合わせて計4種類の塩麹を作ることができます。用意されるスパイスや食材は日によって変わり、京都の宇治抹茶、中華料理によく用いられる八角、甘い香りが特徴のフェンネル、ほろ苦い柚子ピールなど種類は様々。お好みで3種類を選ぶことができます。

塩麹作りに使うのは、まるで実験器具のような試験管。生麹とスパイスを入れてから、規定量の食塩水を注ぎます。食塩水を作る時に塩の溶け残りがないようにしておくのが、おいしい塩麹を作るポイント。生麹は通常の乾燥麹と違って水分が含まれるため発酵スピードが速く、麹の酵素力も強いため、よりおいしく、比較的失敗せずに塩麹を作ることができるのだそうです。

自宅に持ち帰ってからは常温で保存し、1日1回かき混ぜます。約2週間熟成させて、ほんのりと甘い香りがしてきたら完成。塩麹として使うことができます。完成後は冷蔵で3ヶ月を目安に使い切るようにしましょう。塩麹は、肉や魚はもちろん野菜にもよく合う万能調味料。自分だけの塩麹を使ったアレンジレシピをあれこれ考えるのも楽しいひとときです。

醗酵文化を日常の中に取り入れて

体験の締めくくりには、黒麹甘酒を1杯プレゼント。焼酎づくりに使われる黒麹は酸味が特徴で、一度飲んだらクセになる甘酸っぱい味わいです。黒麹をはじめ、多種多様な麹調味料や乾燥麹などは、体験後に店頭で購入することもできます。

出麹をした生麹（100g）は袋に詰めておみやげとして持ち帰ることができます。自分の手でほぐした麹は、愛着もひとしおです。生麹は通常は店頭で販売しておらず、本体験のゲストだけに特別にお渡しするもの。乾燥麹とは違い、麹菌が失活せず生きたままなので香りや風味がより良く、発酵パワーも強いといわれています。自宅でもう一度塩麹を作ってみたり、今度は甘酒を作ってみたり……。思い思いのレシピを楽しみ、味わってみてください。