全国100蔵以上の醸造所を訪れたみそ探訪家・岩木みさき氏
東急東横線・都立大学駅から桜並木の緑道を10分ほど歩いたところにある、閑静な住宅街。都心ながら緑の多いこの場所に、会場の「LiB contents」があります。日頃はオーダーキッチンのショールームとして利用されているこのスペースを貸し切り、窓から入り込む心地良い日差しに包まれながら、味噌の世界に没頭するひとときが始まります。
会場となる「LiB contents」。ナチュラルな外観が訪れる人をやさしく迎える講師は、みそ探訪家であり実践料理研究家の岩木みさき氏。2016年から全国各地の味噌蔵を探訪し、味噌について調査を続けてきました。「すぐに実践できる健康レシピ」をテーマに、日本の伝統調味料である味噌の魅力発信はもちろんのこと、暮らしに簡単に取り入れられる調理法やアレンジのポイントを伝えています。ラジオやテレビへの出演、レシピ考案、撮影、企業支援の実績も多数。料理教室や講演は通算1,600回以上の登壇実績を誇ります。
講師の岩木みさき氏。味噌の魅力を国内外へ情報発信するほか、全国の味噌蔵をつなぐ活動も行う岩木氏が味噌を学びはじめたのは、自身が10代の頃に経験した心身の不調がきっかけでした。食べることについて考え続けた先に「身体は食べたものでできている」と強く感じ、健康に良いとされる味噌に注目するようになったのだとか。「たんぱく質を豊富に含み、かつ腸を元気にする発酵食品である味噌に、身体を内側から美しくする可能性を感じたんです」と岩木氏は話します。
特別な麹を使って本格的な味噌づくり
「実際に手を動かして体験し、味噌の持つ奥深さ、寛容さを感じてほしい」という岩木氏の思いから、本体験ではまず味噌づくりに挑戦し、座学にて学びを深めます。さっそく岩木氏と共に味噌づくりに挑戦。やわらかくなるまで加熱した大豆をつぶすところから行います。袋の上から大豆に力を込めると、少しずつペースト状へと変化します。
茹でたり蒸したりする前の大豆の姿。加熱してふっくら、もっとも味わいが濃い状態の大豆を力を込めてつぶすと、次第に感触に変化がかつてはご近所同士で地域のお寺や寄合所に集まり、一緒に味噌づくりをしていた時代があったそう。「人々は味噌をつくりながら交流を深め、人間関係を育んできたのです。味噌づくりを通じて忘れられつつある日本の風習を知り、時代に合わせたかたちで取り戻せたら良いですね」と話します。手に伝わる大豆の感触が気持ち良くつい没頭してしまいますが、人々が賑やかに味噌を仕込む様子を想像しながら、岩木氏やゲスト同士の会話に花を咲かせるのも良いでしょう。
大豆をつぶし終えたら、塩と麹を合わせる「塩切り」の工程へ。使用する麹は、岩木氏が全国の味噌蔵を訪ね歩き、信頼関係を築いてきた味噌蔵から取り寄せた特別な麹です。麹によって個性が決まる味噌の味。とっておきの麹を使用することで、市販の味噌とはひと味もふた味も違う風味豊かな味噌が出来上がります。
岩木氏が味噌蔵から取り寄せた大切な麹と塩を丁寧に混ぜ合わせる塩切りした麹と大豆を混ぜ合わせたら、発酵・熟成のための容器へと移して仕込みは完了です。そのまま自宅に持ち帰り、完成を待ちましょう(発酵の進みは味噌の種類や季節などにより変わります)。食べごろの目安やカビを発生させないためのポイントを教えてもらえるので、メモを取っておくのがおすすめです。
※開催日によって、つくる味噌や工程が異なる場合があります。詳しくは「予約について」のご案内をご確認ください。
味噌蔵でも活用されている“味噌の教科書”で、基礎から応用までを学ぶ
味噌に関する様々な著書を出版している岩木氏。味噌づくり体験の後は、そのうちの1冊『みその教科書』を使って、味噌の歴史、種類、栄養、活用方法などを学びましょう。本書は味噌に関して深く広く網羅され、味噌蔵でも研修に活用されているという、まさに味噌の教科書。著者である岩木氏直々の解説によって、味噌の基礎から応用までを楽しく理解できます。
テキストの作者である岩木氏のレクチャー付きで学べるまたとない機会同じ調味料とは思えない、多様な味噌をテイスティング
座学で味噌への理解度を高めたところで、岩木氏が全国の味噌蔵に足を運んで買い集めた味噌をテイスティングしてみましょう。甘い風味が魅力の京都の白味噌や、全国で広く親しまれている米味噌、九州地方の甘みのある麦味噌、こっくり濃厚な旨みを持つ豆味噌、雑穀の麹で発酵させた雑穀味噌、料理に手軽に取り入れられるパウダータイプの味噌……。同じ調味料とは思えないほどの多種多様な味わいに出会えます(内容は体験日によって変わります)。
全国から集めた多様な味噌をテイスティングさらに、木桶で発酵させた希少な味噌を味わうこともできます。現在流通している味噌のうち、木桶でつくられた味噌は全体の約1%以下。しかし「木桶には味噌をおいしく発酵させる菌が住み着き、独特の風味を醸し出してくれるんです」と岩木氏。口に運ぶと奥行きのある味わいと共に、醸された大豆のやわらかな香りが鼻腔に広がります。大切に味わいながら、奥深い味噌の世界に思いを馳せてみましょう。
麹の種類や発酵時間によって見た目も味わいも様々に変化する味噌。使いこなせればキッチンでの心強い味方に味噌と共に、岩木氏特製の味噌汁も用意。簡単でおいしい味噌汁のつくり方や食材との合わせ方についても教えてもらえます。「味噌を使った定番料理である味噌汁は、実は非常に自由度の高い料理なんです。トマトやレモンといった食材ともよく合いますよ」と岩木氏。マンネリ化しがちな味噌汁のバリエーションが増えると、先ほど仕込んだ味噌の完成がますます待ち遠しくなりそうです。
味噌を通じて「日本の美」に気がつく時間
岩木氏は味噌づくりを通じて「日本の美」に触れられると考えています。「日本の美は、食べる行為や所作そのものが精神に結びつくところにあるのではないでしょうか。味噌という日本の伝統調味料を手がけ、味わうひとときを通じて、身体の内側から文化を感じ、日本で長い時間を経て培われた美、そして自らの健康について考えるきっかけとなれば幸いです」。
大豆と塩と麹という、シンプルな材料で仕立てる味噌の世界に触れる見えない菌によって醸造される味噌は、まさに見えないところに宿る魂を重んじる、日本の精神性につながる調味料。その魅力を知り尽くし、これからも探求を続ける岩木氏と共に、身近ながら奥が深い味噌の世界を覗いてみませんか。